2010年10月12日火曜日

部活新時代(4)神楽“競演”継承へ一歩

(読売 9月29日)

広島県北西部の山あいにある、北広島町。
町役場近くの集会所の舞台に、
きらびやかな神楽の装束に身を包んだ高校生たちが集った。

参加した県内4校の中で、ひときわ異彩を放ったのが、
県立加計高校芸北分校の神楽部。

長さ13mの巨大な大蛇を、ダイナミックに操る「八岐大蛇」を
30分かけて演じると、400人の地元ファンから大きな歓声。

分校のある芸北地方は、全国有数の神楽どころ。
舞手の派手な衣装と速いテンポが特徴で、100超の神楽団が活動。
生徒数80人の同分校の神楽部は、最も長い62年の伝統を誇り、
現在は男女24人が所属。
伝統芸能の継承だけでなく、祭礼などで年間約20回の公演をこなす。

少子化の影響で、全国の伝統芸能の担い手は減少の一途。
全国高校文化連盟の調査によると、全国の高校で伝統芸能を扱う部活は、
2009年度の144校から、今年度は131校と1割も減った。

同分校では、部活の「2部制」を導入し、部員を確保。
バレーボールやスキー、卓球など七つの「第1部活」への参加が
全生徒への“義務”。
神楽部は「第2部活」で、第1の練習が終わった午後6時から
1時間半、毎日けいこに励む。

部員のうち、半数超の13人が3年生。
「八岐大蛇」には、8体の大蛇を演じる8人のほか、笛や太鼓など
総勢16人が必要なため、3年生は卒業間際まで公演に参加。

部長の田枝浩太さん(17)は、幼い頃から日常的に神楽に触れてきた。
「自分にとって、神楽は子守歌。
今、神楽を楽しめるのも、地域で支えてくれているおかげ。
将来は地域の神楽団に入り、後輩を指導したい」

分校統廃合も取りざたされる中、小田均分校長(55)は、
「分校が存続できるのは、神楽部のおかげでも。
都市部で地域の結びつきが希薄になる中、
その象徴として残していかなければ」と、決意を新たに。

公演を主催したNPO法人・広島神楽芸術研究所の
増田恵二事務局長(52)は、「若い人同士が刺激し合う機会に
なるようにと、県内の高校生を集めて初めて開催。
担い手が地域に根付くように、就職先の確保や常設公演場の
設置も検討すべきだ」

競演後、同NPOには参加校の部員から、1通の手紙が届いた。
〈他の高校と一緒に舞う機会があれば、と思っていたが、
願いがかないました。
精進して、他の高校に負けない部になりたい〉。
伝統を競う試みが、継承の一歩となり始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100929-OYT8T00232.htm

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