2010年10月11日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:住友信託銀行・大久保哲夫常務執行役員

(毎日 10月4日)

環境問題を、信託の機能を使って解決する
「エコ・トラステューション」を掲げる住友信託銀行。

名古屋市で開かれる、生物多様性条約第10回締約国会議
(COP10)に向けても、独自の活動に取り組み、国内の議論をけん引。
大久保哲夫常務執行役員に聞いた。

--エコ・トラステューションの柱として、「環境不動産」を掲げる。

◆オフィスビルなどは、エネルギー消費が多い半面、
省エネが進んでいない分野。
不動産が中核業務の信託銀行として、4月、
「環境不動産推進課」を新設。

ビルの省エネや周辺の生態系配慮などについて、
費用対効果の面からビルオーナーに提案するコンサルティング業務や、
化学物質などで汚染された土地を買収して再生する
ファンドの運営支援に取り組んでいる。

東京都が4月に導入した大規模事業所間の排出量取引制度でも、
規制対象の事業所への提案に力を入れている。

--国内では、環境不動産の普及がなかなか進まない。

環境に配慮した不動産が、市場で高く評価される状況を作る必要。
当社は、07年から「サステナブル不動産研究会」を主催、
国や自治体、建築・不動産業界、投資家やNPOなどと
環境不動産市場の形成に向けて議論を進めている。

--COP10にも深くかかわっている。

◆ドイツで08年に開かれたCOP9で、世界の33社と
「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」のリーダーシップ宣言に署名。
生物多様性に配慮した経営を行う企業へ投資する、
世界初のファンドの開発のほか、支店でも植林や絶滅危惧種の飼育に
取り組んでいる。

日本が議長国であるCOP10の成功に向けて、COP9の直後、
生物多様性問題の国際的な研究リポート
「生態系と生物多様性の経済学」を翻訳、
日本で幅広く読んでもらえるようにした。

生物多様性を経済の問題としてとらえ、
政策的に議論する土壌づくりに貢献。

--社会的責任投資(SRI)の拡大にどう取り組みくむか?

◆アナン国連事務総長(当時)が06年、投資対象を選ぶ際、
「環境、社会、企業統治(ESG)」を重視する
「責任投資原則(PRI)」を提唱。

PRIの署名機関は800を超え、資産運用残高は20兆ドル
(約1680兆円)に上る。
金融危機後、資産運用業界ではESGを顧みない企業を
投資対象から外す動きも出ているが、
日本でPRIに署名しているのは14機関、
資産運用残高も5000億円程度。

当社は、今年発足したPRIの日本ネットワークの共同議長を務め、
SRIの新商品開発など、市場拡大に貢献していく考え。
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◇おおくぼ・てつお

80年東大法卒、住友信託銀行入行。
受託資産企画部長、執行役員業務部長などを経て、
08年6月から現職。54歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/04/20101004ddm008020026000c.html

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