2010年10月15日金曜日

部活新時代(7)顧問教員の「献身」頼り

(読売 10月2日)

「音つかんでないよ!」、「ハイッ」。
板橋区立赤塚第三中学校の音楽室。
指揮棒を振りながら容赦ない声を飛ばすのは、
吹奏楽部顧問の斉藤厚子教諭(51)。

公立中の音楽教師になって以来、29年間、吹奏楽部の指導一筋。
以前教えた4校では、いずれも都大会入賞や全国大会出場へ。
同中には昨春着任、9月に行われた都吹奏楽コンクールでは、
見事金賞を射止めた。

平日放課後に加え、土曜日は朝から夕方まで練習。
夏休みも練習した。
生徒は、お盆のころに2週間休んだが、都中学校吹奏楽連盟で
副理事長を務める斉藤教諭が休めたのは1週間。

「『疲れた』と愚痴ることもあるが、部活は生徒が精神的に成長できる
またとない機会」と、長年顧問を続けてきた理由を明かす。

部活の教育的意義が、高く評価されている。
授業や学校行事からなる教育課程以外の活動として扱われ、
教員が顧問に就くことが、職務なのか、ボランティアなのか、
あいまいなままにされてきた。

1998~99年、改訂された学習指導要領では、
部活に関する言及が消えたため、「職務ではない」として、
顧問を引き受けない教師が増加。
生徒減とともに、廃部が相次ぐ一因。

こうした事態に気づいた国は、08~09年の改訂で、
部活について具体的に言及。
今後、「部活は職務」として扱う動きが広がっていく。

「頑張っている教師を支援することも必要」、
国は08年秋から、自治体に交付する義務教育費国庫負担金の算定で、
教員の休日の部活指導に支払う手当を、
1日あたり1200円から2400円に引き上げた。
部活の振興に力を入れる都は今春から、国の基準を上回る
3200円の手当を支給。

斉藤教諭の家計も、おかげでちょっぴり潤うように。
「助かっている。
楽譜やCDの購入などで、年間20万円ほど自腹を切る。
大変だが、部活を通じて人を育てていきたい」、
亡き夫の洋潮さんが野球部顧問を務めた同中で、
全国大会出場を目指し、指揮棒を振り続けるつもり。

部活は、教員の勤務が多忙になる中、
その献身的な活動によって成り立っている。

西島央・首都大学東京准教授は、「指導要領の改訂を機に、
顧問となる教員を支える制度や組織を、それぞれの地域の特徴に
合わせて構築してほしい」と訴えている。

◆学習指導要領

国が学校教育の内容や水準を定め、ほぼ10年ごとに改訂。
08~09年の改訂で、部活は「スポーツや文化及び科学等に親しませ、
学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、
学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101002-OYT8T00157.htm

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