2009年3月2日月曜日

第1部企業スポーツの危機(3)「身の丈」強化の限界(氷河期を生き抜く)

(2009/02/24 日本経済新聞)

昨年末、年明けと行われたハンドボール日本代表の強化合宿。
招集されたトヨタ紡織九州の2選手の姿がなかった。
派遣従業員を減らし、佐賀県神埼市の本社工場の生産現場が急変。
「製造技術員室」の2人も職場を離れづらくなった。

「こういうご時世。仕事をしっかりやる姿勢を会社に示すことが先決」
業務部長でもある同社ハンドボール部の原田孝幸ゼネラルマネジャー(GM)は
苦しい胸の内を明かす。
昨年12月から日本リーグの遠征帯同メンバーを4人減らし、
試合前日の宿泊もやめた。

企業チームは、会社側と来年度の活動費をめぐる折衝の真っ最中。
日本ハンドボールリーグ機構の家永昌樹GMは、
「前年比で10―20%減という企業が多い」
ラグビーでは、社員選手よりも高年俸のプロ契約を打ち切るケースが相次ぐ。
底の見えない不況がチーム防衛に走らせる。

オンワードが廃部を決めたアメリカンフットボール・Xリーグ。
昨季1部で最下位のROCBULLは、入れ替え戦を辞退、すすんで2部落ち。
前年には2部を連覇したクラブが、2年連続で入れ替え戦を辞退。
目標とすべき最高峰の舞台を半ば押しつけ合う。

縮み志向の背景には、リーグ参加費もある。
Xリーグ1部の場合、年会費やチケット購入の負担など総額800万円。
プレーオフを勝ち上がって決勝まで進めば、さらに最大750万円。
プロリーグでないから、賞金や放映権料の分配はない。
勝てば勝つだけ、チーム側の持ち出しが増える。

会社とリーグ(競技団体)との板挟みとなったチームの現場は、
双方の顔色をうかがいながら生き残りへ知恵を絞る。
ハンドボール男子の大崎電気は、スター選手の宮崎大輔をフル活用。
今季からホーム試合の入場券を、1000円から2000円に値上げ、
宮崎の所属マネジメント会社の協力を得て、
広告看板スポンサーを6社見つけた。

「興行収支は、トントン以上。会社側の持ち出しを少しでも減らさないと」
と大崎の矢内浩GM。
競技団体への不満も漏れる。
「チームや選手にプロ意識を持てと言うけど、協会がアマチュア。
何でも企業におんぶに抱っこでは困る」

ホンダが撤退するハンド日本リーグは、地域リーグをつくるなど再編。
社会人野球は、大会の統廃合を検討。
競技団体も、生き残り優先の縮み志向を強めている。

来季より、チーム数を10から8に減らすバレーボールのVプレミアリーグ女子。
関係者から「外れたチームが(意欲をなくし)やめてしまうのではないか」と、
コンパクト化のマイナス作用を案じる声も。
本来堅持すべき強化の道筋さえ見失いかねない。

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