(日経 8月4日)
まもなく盆休み。
ビジネスパーソンにとって、新刊本をまとめ読みするチャンス。
ビジネス書の売り場には、会計の入門書や自己啓発本といった
定番商品に加え、金融危機の原因を分析したり、
危機後の世界経済を展望したりする書籍が並んでいる。
◆売れ筋 財務関連▽国際会計基準に備え
ノウハウ▽脳科学で効率上げ
売れ筋のビジネス書は、大きく2つの系統。
1つは、企業財務などの知識を分かりやすく紹介した入門書。
もう1つは、仕事や勉強の効率を高めるための時間管理や
情報整理の技術を紹介したノウハウ(ビジネススキル)本。
第1の系統で目を引くのは、国際会計基準(IFRS)の関連書籍。
「なるほど図解IFRSのしくみ」(中央経済社)、
「国際会計基準IFRS完全ガイド」(日経BP社)。
会計とはなじみが薄かった人を意識し、イラストや図表を多用。
IFRSは、2010年から上場企業の連結決算への任意適用が始まる。
「企業の経理・財務担当者だけでなく、一般のビジネスパーソンの
間でも関心が高まっている」(八重洲ブックセンター)
企業会計全般を扱った本では、
「財務3表一体理解法」(朝日新聞出版)、
「財務3表一体分析法」(同)に人気。
財務諸表の構造を体系的に紹介するのではなく、
貸借対照表や損益計算書などが、どの項目で相互に
関係しているのかを分析することに的を絞っている。
この手法を用いて、個別企業の決算を分析した事例を多数掲載。
実戦的な財務分析の技術を得られる。
第2の系統であるノウハウ本では、
「整理HACKS!」(東洋経済新報社)が好評。
同書は、デジタルデータの整理方法について、
多くの紙幅を割いている点が特徴。
「SugarSync」、「Twitter」など、最新のITサービスを活用した
業務効率の改善法を紹介。
「超『時間脳』で人生を10倍にする」(宝島社)は、
脳機能学者、苫米地英人氏の効率的な時間管理の方法論。
「一瞬で相手をオトす洗脳術」(マキノ出版)、
「脳にいい勉強法」(アスコム)にも、
苫米地氏の脳科学の知見を対人コミュニケーションや勉強などに
応用するノウハウが載っている。
◆お勧め 金融危機▽もろい現代を知る
社会起業▽新しい価値観発見
時間に余裕のあるときに、専門書をじっくりと読みたいという人も。
この夏は、金融危機について知見を深められるような本が
書店に並んでいる。「かなり高度な内容も含まれているが、
幅広い年齢層の読者が手に取っている」(日本出版販売)
その象徴が、「ブラック・スワン」(ダイヤモンド社)。
正規分布など、統計学の常識の上に積み上げられた
現代の金融理論の体系のもろさを指摘、
「黒い白鳥」など巧みな比喩を用いて不確実性のリスクに言及。
金融危機関連では、
「資本主義はなぜ自壊したのか」(集英社インターナショナル)、
「資本主義崩壊の首謀者たち」(集英社)、
「完全にヤバイ!韓国経済」(彩図社)など、
刺激的なタイトルの本が書棚の広い面積を占めている。
このほかの分野では、社会が抱える問題を、
ビジネスを通じて解決しようとする「社会起業」に関する本。
「『20円』で世界をつなぐ仕事」(日本能率協会マネジメントセンター)
は、途上国で学校給食の普及に取り組んでいる
非営利組織(NPO)法人の活動を紹介。
このNPOは、企業に社員食堂でメニューの一部を
低カロリーの食事にするように促し、浮いたコストを企業から集め、
途上国での給食費に充てている。
「世界を変える人たち」(ダイヤモンド社)は、
公共性と経済性を両立させた海外の様々なビジネスモデルを紹介。
紀伊国屋書店大手町ビル店では、社会起業を扱った書籍の
専門売り場を設けた。
萩原正之店長は、「金融危機後の世界で、新しい価値観を求める
読者の関心に応えるため」と狙い。
経営者本では、スズキの鈴木修会長兼社長が著した
「俺は、中小企業のおやじ」(日本経済新聞出版社)と、
パナソニック創業者の故松下幸之助氏のリーダー論を紹介した
「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」(PHP研究所)が人気。
堅実経営で知られる大手製造業トップの言葉に、
関心が集まるところに時代性が表れている。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090804.html
0 件のコメント:
コメントを投稿