2009年8月17日月曜日

遺伝子解析で水稲開発 本県2研究センター

(岩手日報 8月12日)

岩手生物工学研究センター(北上市)と県農業研究センター(同)は、
遺伝子解析を活用した新たな育種方法「DNAマーカー育種」により、
低温でも発芽しやすいじかまき用の水稲を開発。
同育種方法の活用は県内初で、全国でも珍しい。
従来の手法より、新品種の開発期間が大幅に短縮され、
さまざまな水稲開発への応用が期待。

岩手生物工学研究センターと県農業研究センター、文部科学省の
補助金で設置した研究教育拠点、「岩手大21世紀COE」が連携。

DNAマーカーは、品種などの性質を決める
DNAの塩基配列に目印を付け、判別しやすくしたもの。

じかまき水稲は、コスト軽減や効率化が注目され、
4月下旬から5月上旬の低温期に種まきするため、
発芽や苗立ち率のばらつきが課題。

今回、このDNAマーカーを活用し、県オリジナルの水稲品種
「いわてっこ」に、低温発芽性を持つ外国品種を掛け合わせた。

外国品種は、低温発芽性を持つが、食味は劣る。
この低温発芽性に関連する遺伝子以外は、食味の良い
「いわてっこ」とほぼ同じDNAを持つように交配。

従来の育種方法では、二つの品種を掛け合わせ、
生育後に検定を行っていた。
検定は年1回程度しかできず、特定の性質を取り込むまでには、
数回の交配と検定が必要、
新品種の開発まで4~5年はかかっていた。

DNAマーカー育種方法では、最初に外国品種の中で
低温発芽性の遺伝子を持つDNA領域を特定。
このDNA領域を識別しやすくするため、
目印であるDNAマーカーを利用、交配。

同方法は、苗の時期に特定の性質を持つか否かを、
DNAマーカーを使って選抜するため、
新品種の開発までの期間が2年ほどに縮まった。

低温発芽性を取り込んだ新品種は、「いわてっこ」に比べ、
種まきから31日後の苗立ち率がほぼ倍増。
草丈は3センチほど伸びた。
今後は実用化に向け、栽培特性などの研究を進める。

岩手生物工学研究センターの寺内良平生命科学研究部長は、
「DNAマーカー育種を実用化した先駆け的な研究成果。
耐病性や食味などの基本的性質の向上や特産地化につながる
水稲の開発にも応用できる」と可能性を探る。

◆DNAマーカー

品種間や個体間のDNA塩基配列の違いを目印にして
利用できるようにしたもの。
低温発芽や耐病性など、有用な遺伝子の位置を示す
DNAマーカーがあれば、DNA分析により、
圃場栽培しなくても実験室で早期に特性を把握。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200908/e0908121.html

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