(日経 8月9日)
サッカー日本代表が、2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の
アジア最終予選を突破。
順調にハードルを越えてきた岡田武史監督だが、
前任のイビチャ・オシム氏の病気休養による緊急登板。
オシム氏は、1990年ワールドカップ・イタリア大会で、
ユーゴスラビア代表をベスト8に導くなど、名将として知られる。
オシム氏は、日本代表の改革に向け、「走ること」、「考えること」、
「日本人の強みを生かすこと」を強調。
岡田監督は、その基盤を活用し、俊敏性や持久力といった
日本人の特性を生かした「走り勝つサッカー」という
勝ちパターンを築きつつある。
チームのビジョンとして、「ワールドカップでベスト4」を打ち出している。
予期せぬ形ではあったが、スムーズに継承が行われた。
岡田監督で着目すべき点は、選手の起用方法。
チームスポーツでは、選手の起用方法によって
勝敗が左右されることは珍しくない。
企業においても、人材活用はマネジメントの重要要素の一つ。
選手(人材)起用の原則は、実力主義。
これが当たり前のようでいて、なかなか難しい。
チームの柱として活躍してきた選手を外すような意思決定は、
名監督でもためらう場合が少なくない。
選手起用のポイントは、チームの勝ちパターンに従って、
各ポジションに求めるべき人材像を描き、
その時の実力を評価して選定すること。
それまでの実績は関係ない。
岡田監督が提唱する「走り勝つサッカー」という考え方に基づいて
登用された選手は、いずれも予選で大活躍。
チーム内競争の維持も、重要な要素。
企業でも、スポーツチームでも、メンバーを固定した瞬間から
退化が始まる。
岡田監督は、18歳の山田直選手を招集、
チーム内の競争が常に活発になるようにしている点も秀逸。
産業界で同様の例を探すと、ユニクロを運営している
ファーストリテイリングが思い浮かぶ。
同社の柳井正会長兼社長は、経験や実績にとらわれず、
能力があると認めた人材を店長に登用。
全店長の成績を毎月評価して競争を促すなど、
社内競争を活発にする仕組みも整えている。
2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の出場を決めた
サッカー日本代表の課題は何か?
グローバル化に成功したと言われる日本の自動車メーカーの事例。
日本代表の現在の実力は、FIFAランキングで世界40位前後。
「ワールドカップでベスト4」から、かなり遠い位置。
日本のベスト4入りの可能性は、かなり低いと言わざるを得ない。
トヨタ自動車やホンダは、なぜグローバルプレーヤーの
仲間入りができたのか?
世界最大の自動車市場だった米国で、
名もないときから経験を積んできたことが大きい。
自動車メーカーにとって、最重要市場は以前から
日本ではなく米国だった。
ゼネラル・モーターズやフォード・モーターなど、
米国メーカーを模倣するのではなく、日本人らしい
細部へのこだわりや品質の高さを勝ちパターン。
供給者優先(プロダクトアウト)の考え方が強い米国勢に対し、
日本勢は消費者と徹底的に対話しながら、製品改良を重ねてきた。
膨大な投資や努力を続けられた背景には、
世界的なプレーヤーになるというビジョンがあった。
「明確かつ確固たるビジョン」、「差別性のある勝ちパターン」、
「最激戦市場でのPDCA(計画・実行・検証・修正)サイクルの継続」
がキーワード。
サッカーの日本代表は、グローバルプレーヤーになり得るか?
ワールドカップベスト4という明確かつ確固たるビジョンはある。
差別性のある勝ちパターンとして、
「俊敏性と持久力を生かした走り勝つサッカー」がある。
これから求められるのは、最激戦市場でのPDCAサイクルの継続。
日本代表の選手の大半が、Jリーグでプレー。
このような状況では、PDCAサイクルを回すのは難しい。
日本代表として、欧米でできるだけ多くの試合をこなし、
厳しい局面を数多く経験することが必要。
Jリーグの各チームが岡田監督のビジョンを共有し、
代表に選ばれた選手をチームから解き放つ勇気が求められる。
周到な準備で臨めば、日本代表の躍進は十分期待。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090806.html
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