2009年8月19日水曜日

iPS効率、20%に改善 がん抑制遺伝子を"封印" 作製方法改良、山中教授ら

(2009年8月10日 共同通信社)

新型万能細胞「iPS細胞」の作製効率を、
従来の1%以下から最大で約20%に高めることに成功、
京都大の山中伸弥教授らが
10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表。

作製効率は、実用化に向けた課題。
山中教授は、「大幅な改善で意義は大きい。
ただがんになりやすく、今後は安全性を高める必要がある」

山中教授らは、がん増殖を抑えるp53という遺伝子に着目。
この遺伝子を、人工的になくしたマウスの皮膚細胞に、
iPS作製に必要な4遺伝子を"運び屋"となるウイルスを
使って入れると、iPS細胞になる効率が約20%に向上。

p53は、4遺伝子を入れる工程を不自然な刺激ととらえ、
細胞を自殺や増殖停止に導くため、
これまでは作製効率が悪かったと考えられる。

安全性向上を狙ってウイルスを使わなかったり、
導入する遺伝子を三つに減らしたりする方法でも、効率は向上。
ヒトの皮膚細胞でも、p53を人工的に働かなくすると、同様の結果。

iPS細胞とがん細胞は、無限に増殖できるなど共通点が多く、
関連が指摘。
今回、がんの増殖抑制という重要な機能を止めており、
このままでは患者の治療や新薬研究には使えない。
山中教授は、「一時的にp53を働かなくするなど工夫が必要」

これまで、完全に分化を終えたリンパ球などから
iPS細胞を作るのは難しかったが、
山中教授らは今回の手法でマウスのTリンパ球からの作製に成功。
将来、採血するだけでiPS細胞を作製できる可能性を示すもの。

▽p53

代表的ながん抑制遺伝子の一つ。
細胞のがん化には、複数のがん遺伝子と、
がん抑制遺伝子の変化が必要とされ、
がん細胞ではp53の変異や欠失などの異常が多く認められる。

さまざまな変化に対し、細胞を一定の状態に保ったり、
修復不可能な損傷を受けた場合は、細胞を自死に誘導。
その働きの重要性から、「ゲノム(全遺伝情報)の守護者
とも呼ばれ、各国で研究が進められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/10/105574/

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