(読売 8月6日)
市民向け講座を多彩に展開する博物館も少なくない。
「ブオー、ブオー」
ウシガエルの太い鳴き声と鳥のさえずりが響く田んぼ道を、
大きな虫取り網を肩にかついだ中学生たちが歩く。
「あ、おるおる、ヤンマ!」と誰かが叫ぶ。
小高い丘の上では、初めてオオムラサキのオスを
捕まえた子がうれしそう。
わなを仕掛けるため、手がハチミツでべたべたになった子も
いれば、草の上に座り込んで採集ポイントを相談する一団も。
兵庫県立人と自然の博物館(同県三田市)が、
六甲山の近くにある神戸市北区の里山で開いたセミナー
「ユース昆虫研究室」
中学生男女18人が、通年計13回の日程で、
野外での昆虫採集・観察、標本製作、調査結果のまとめ方などを
学び、オリジナル昆虫図鑑を作成して展示、発表。
ガが好きという中学2年、川崎安寿さん(13)は、
「周りには、昆虫好きがいないけれど、ここに来れば昆虫について
突っ込んだ話ができるし、もっと力を高めることができる」
講師を務める同館主任研究員の八木剛さん(40)は、
「昆虫好きは、今では学校に1人いるかいないかの
圧倒的少数派で、学校教育ではカバーできない。
博物館のセミナーだからこそ、仲間と興味を深めることができる」
同館は1992年、同県内の新興住宅地に、
環境や自然に関する博物館を、という県民の要望を受けてオープン。
恐竜の化石や昆虫の標本など、100万点以上を収蔵。
大都市からの交通の便が悪いこともあり、
入館者数が年間十数万人と、この規模の博物館としては低迷。
2002年度から、「生涯学習の支援」などをテーマに、
改革に踏み切ることに。
同館は、兵庫県立大学の自然・環境科学研究所の一部も兼ね、
研究員が37人と比較的多い。
研究員らが講師となり、一般市民向けセミナー数を増やしていった。
同館生涯学習課長の平松紳一さん(50)は、
「展示作品は、年数がたつと古くなるが、更新は容易にはできない。
そこで、博物館の人を動かして外に出て、
お客さんに来てもらおうということになった」
セミナーは、今年度だけで「丹波の恐竜化石」、
「芦屋でまなぶ森・川・海の自然」、「六甲山のホタル」など
延べ400回以上を予定。
同館の利用者数は、直接足を運ぶ入館者数こそ
昨年度12万人と相変わらずだが、
セミナー参加者などを含めると同55万人に及ぶ。
ユース昆虫研究室も、今年で9年目。
卒業した高校生、大学生はサークルを作り、
セミナーにも顔を出して子どもたちの相談に乗る。
子どもたちは時間を忘れ、知らないことを自分で調べたり、
みんなで話し合ったりする。
博物館の外で行う活動が、新たな展開につながっている。
◆講座やセミナーなどが充実している主な自然系博物館
千葉県立中央博物館(千葉市)
ミュージアムパーク茨城県自然博物館(坂東市)
群馬県立自然史博物館(富岡市)
神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)
大阪市立自然史博物館(大阪市)
兵庫県立考古博物館(兵庫県播磨町)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090806-OYT8T00309.htm
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