(毎日 8月20日)
長野五輪前年の1997年に登場した「スラップスケート」は、
スピードスケート界を劇的に変えた。
氷をけった時に、スケート靴のかかととブレード(刃)をつなぐ
部分が離れ、バネ仕掛けで再び戻る仕掛けのスラップは、
より長く氷に力を伝えることが可能になり、直線のスピードが向上。
そのスラップも、登場から10年以上。
技術は完成されつつある。
「直線の次はコーナー」と、02年のソルトレークシティー五輪前後から
世界に広がり始めたのが、ブレードを湾曲させる技術。
ブレードをリンクのカーブに合わせ、肉眼ではわからない程度に
緩やかに曲げる。
真っすぐなブレードよりも、コーナーで体を傾けた際、
氷に接触する部分が増え、安定性が高まる。
湾曲の度合いが大き過ぎると、直線での氷の抵抗が増えてしまう。
直線スピードを犠牲にせず、どれだけコーナーでの
安定性を高められるか?
バランスを取るには、ごく微小なレベルでの調整が不可欠。
日本やカナダなど、1000分の1ミリまで測定できる機器を導入、
適切な湾曲度合いを探っている。
日本の男子短距離の2本柱、長島圭一郎、加藤条治らが
所属する日本電産サンキョーでも、06年トリノ五輪後から
本格的に湾曲の精度向上に取り組んできた。
電子部品など精密機器を製造している同社のノウハウを用い、
ブレードを湾曲させる器具も作った。
同社スケート部で用具調整を担当する小沢竜一コーチ(28)は、
湾曲によって、「これまでカーブは、『どれだけスピードを落とさずに
曲がり切れるか』が勝負だったが、いまや加速する場所に変わった」
湾曲の技術は本来、より小さいカーブを曲がる
ショートトラック(ST)で開発。
小沢コーチも、ST中長距離の元学生王者の肩書を持つ。
「用具に不安なく、選手をリンクに送り出したい」と話す
小沢コーチの家業は大工。
「幼いころから仕事を手伝っていたので、カンナの刃の出し入れなど
ミリ以下の道具の調整は慣れてます」と苦笑、
家業で培った「目」も日本短距離陣の武器。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/20/20090820ddm035050189000c.html
0 件のコメント:
コメントを投稿