2008年10月31日金曜日

考える力(3)他学年参観 自主性生む

(毎日 10月23日)

小学生が他の学年の授業を参観する学校がある。

子供たちが教室の後ろにずらりと並び、他の子供の様子を観察、
気づいた点をメモする。あまり見たことのない光景。
神奈川県厚木市立三田小学校では、全学年が年1回以上、
他学年の授業を参観する。

3時限目は、5年の5学級が班に分かれ、6年と3年の計10学級を訪ねた。
4時限目、5年生は学級に戻って発表し合った。
「発言する人を、みんなが見ていたのが良かった。他の意見はありますか」、
「相談タイムに参加しない子がいました。僕の意見をどう思いますか」。

子供たちは、「コの字」に囲んだ机で自主的に話し合いを進め、
教師は意見を整理しながら黒板に書く。
3年生の授業を見た子供が、「発表者が『聞いてください』と言うと、
みんな『はい』と答えます。僕たちもした方がいい」と発言。
教師が、「この学級でもやっているのでは?」と聞くと、
「先生に言われなくても、徹底できる方がいいと思います」と提案。

同小は2年前から、考える力を育てる
「聴いて考えてつなぐ学習」を打ち出している。
山本金五校長(57)が提唱し、静岡県藤枝市の小学校をモデルに、
子供主体の授業作りの旗を振ってきた。

教師が教えすぎず、子供の発言を上手に引き出しながら授業を作る。
イメージをつかめない教師には、モデル授業のビデオを見せ、
藤枝市の小学校の授業を視察させ、教師同士の交流も進めた。

研究主任の山田博子教諭(49)は、最初に子供の机をコの字形に並べたり、
グループを組ませたり、授業の狙いによって変えた。
「互いに相手の目を見ながら、発言や話し合いをすることが大事。
黒板が見えるか不安もあったが、子供たちは工夫して集中する」

同小は、1人で考えたり書いたりする「ひとり学習」の時間と、
1分程度で仲間と話し合って考えをまとめる「相談タイム」を全校で実施。
授業中、教師の話や同級生の発表に「どうしてそうなるの?」と盛んに発言。

昨年から導入した子供の授業参観も、子供の自主性を育てるのが狙い。
集中している子供の姿を見ると、子供は自分の授業で自然にまねようとする。
「自分の学習態度を振り返り、反省する機会になる。
下級生の授業でも、参考になることを見つけたり、自分の成長を確認して
励みにしたりする。教師にとっても勉強になる」と山本校長。

山田教諭は、「以前に比べ、子供が授業中、よく考えて発言するようになった。
学級活動で自分の考えの理由をはっきり言う子、
全校集会で話を聞ける子も増えた」と変化を実感。

山本校長は、「授業はまだ試行錯誤。成果はこれから」と慎重。
「小学校は、子供に社会で生きるために必要な基礎学力を保証することが大事。
教員の温度差を埋め、学校としての指導方針を一貫させることも必要」と強調。

◆聴いて考えてつなぐ学習

「相手の話に耳を傾け集中して理解する力、相手と意見を比べたり
修正したりしながら自分で考える力、自分の考えと理由をはっきりさせて発表し、
話し合いをつなげて発展させる力を養う学習」。
小学校の新学習指導要領がめざす思考力、判断力、表現力の育成を含んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081023-OYT8T00249.htm

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