(毎日 10月23日)
小学生が他の学年の授業を参観する学校がある。
子供たちが教室の後ろにずらりと並び、他の子供の様子を観察、
気づいた点をメモする。あまり見たことのない光景。
神奈川県厚木市立三田小学校では、全学年が年1回以上、
他学年の授業を参観する。
3時限目は、5年の5学級が班に分かれ、6年と3年の計10学級を訪ねた。
4時限目、5年生は学級に戻って発表し合った。
「発言する人を、みんなが見ていたのが良かった。他の意見はありますか」、
「相談タイムに参加しない子がいました。僕の意見をどう思いますか」。
子供たちは、「コの字」に囲んだ机で自主的に話し合いを進め、
教師は意見を整理しながら黒板に書く。
3年生の授業を見た子供が、「発表者が『聞いてください』と言うと、
みんな『はい』と答えます。僕たちもした方がいい」と発言。
教師が、「この学級でもやっているのでは?」と聞くと、
「先生に言われなくても、徹底できる方がいいと思います」と提案。
同小は2年前から、考える力を育てる
「聴いて考えてつなぐ学習」を打ち出している。
山本金五校長(57)が提唱し、静岡県藤枝市の小学校をモデルに、
子供主体の授業作りの旗を振ってきた。
教師が教えすぎず、子供の発言を上手に引き出しながら授業を作る。
イメージをつかめない教師には、モデル授業のビデオを見せ、
藤枝市の小学校の授業を視察させ、教師同士の交流も進めた。
研究主任の山田博子教諭(49)は、最初に子供の机をコの字形に並べたり、
グループを組ませたり、授業の狙いによって変えた。
「互いに相手の目を見ながら、発言や話し合いをすることが大事。
黒板が見えるか不安もあったが、子供たちは工夫して集中する」
同小は、1人で考えたり書いたりする「ひとり学習」の時間と、
1分程度で仲間と話し合って考えをまとめる「相談タイム」を全校で実施。
授業中、教師の話や同級生の発表に「どうしてそうなるの?」と盛んに発言。
昨年から導入した子供の授業参観も、子供の自主性を育てるのが狙い。
集中している子供の姿を見ると、子供は自分の授業で自然にまねようとする。
「自分の学習態度を振り返り、反省する機会になる。
下級生の授業でも、参考になることを見つけたり、自分の成長を確認して
励みにしたりする。教師にとっても勉強になる」と山本校長。
山田教諭は、「以前に比べ、子供が授業中、よく考えて発言するようになった。
学級活動で自分の考えの理由をはっきり言う子、
全校集会で話を聞ける子も増えた」と変化を実感。
山本校長は、「授業はまだ試行錯誤。成果はこれから」と慎重。
「小学校は、子供に社会で生きるために必要な基礎学力を保証することが大事。
教員の温度差を埋め、学校としての指導方針を一貫させることも必要」と強調。
◆聴いて考えてつなぐ学習
「相手の話に耳を傾け集中して理解する力、相手と意見を比べたり
修正したりしながら自分で考える力、自分の考えと理由をはっきりさせて発表し、
話し合いをつなげて発展させる力を養う学習」。
小学校の新学習指導要領がめざす思考力、判断力、表現力の育成を含んでいる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081023-OYT8T00249.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿