2008年11月1日土曜日

考える力(4)科学館授業 興味を刺激

(毎日 10月24日)

科学館を利用した理科授業が、考える力を高める一助になる。

約150人の中学1年生を前に、講師がけたたましく鳴るブザーを箱に入れ、
中の空気を抜いていく。
音は徐々に小さくなり、真空に近くなると最前列でも聞こえなくなった。
音が空気の振動で伝わることを、実体験する実験。

島根県出雲市の出雲科学館で行われた授業のテーマは、「音と光」。
旭丘、佐田、湖陵の市立中3校の生徒が、サイエンスホールで実験に見入った。

音の次は光。
音を光に変換する装置を使い、光を操作して離れたスピーカーから音を出す。
「この技術が、現在の光ファイバー通信に応用されています」。
科学の不思議さや理屈とともに、実生活で応用されていることも伝える。

中学生たちは実験室に移ると、ホールでの授業を基礎知識として、
レンズの仕組みを学んだ。
「凸レンズが像を結ぶ焦点の距離や像の向きはどうなるだろう?」
予想を立てた上で、実験で検証する。
仕上げは紙筒とレンズ、感光紙を使った簡易カメラ作り。
「カメラのレンズの下半分を紙で隠すと、どう見えると思う?」
実際にやってみると、少し暗いがすべての像が見える。
「その理由は、考えてみてください」

2時間の授業は、頭を使って考えたり、データを取ったり、
ハサミやテープを使って工作したりと課題が盛りだくさん。
生徒は楽しそうにこなした。

科学館の授業は、実験器材がそろっているのが魅力だが、
生徒の興味を引く教え方の工夫も参考になる」と引率した教員の一人、
旭丘中の久保田秀行教諭(46)。

科学館は、理科離れを防ぐ地域の学習センターを作ろうと、
島根大教育学部教授だった曽我部国久館長(65)が構想を立て、
出雲市が2002年に完成。
市内52小中学校の小3以上の全学級が年1~3回、
この場で理科の授業を受ける。
小中学校の教員免許を持ち、理科授業や教員研修を受け持つ講師が7人いて、
午前と午後で4学級ずつ、授業ができる体制。

実験や体験をショーに終わらせないよう、関連した実験を
すぐに生徒自身の手でさせる。
科学への興味や確かな知識につなげる工夫。

引率する教師にも手本となる授業をめざす。
曽我部さんは、実演授業後に「実験装置で何をやろうとするのか、
もっとわかりやすく説明しないと」と若い講師を指導。
「子供の興味や考える機会を引き出す方法を学んでもらえれば、
毎日の授業の改善につながる」

理科は、子供の学習意欲を引き出す様々な仕掛けが可能な教科。
「理科を材料に、子供が興味を持って調べる体験をすること。
あとは理科に限らず、興味を持つ子の背中を教師が上手に押せば、
子供の考える力は伸びる」

年に数回の科学館授業も、子供と教師の双方の力を育てることができれば、
大きな実りとなるはずだ。

◆理科授業と科学館

出雲科学館のほか、福島県須賀川市ふくしま森の科学体験センター、
栃木県真岡市科学教育センター、京都市青少年科学センターなど。
新学習指導要領でも科学館の活用がうたわれ、
国立科学博物館を中心に全国の科学館や博物館、動物園などが連携し、
学校の授業に生かす仕組み作りが進んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081024-OYT8T00232.htm

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