2008年10月29日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/281 ビデオ判定/4

(毎日 10月26日)

ビデオ判定は今、審判の補助的な役割を超えつつある。
選手側が再判定を要求できる競技では、
ゲームの流れを引き寄せる重要な手段にもなる。

今年9月20日、国内では初の導入となった女子テニス協会(WTA)ツアーの
東レ・パンパシフィックオープンで、象徴的な場面があった。
タイブレークとなったシングルス準決勝の第1セット。
4-2とリードしたカタリナ・スレボトニク(スロベニア)の鋭いサーブが
サイドライン付近で弾んだ。
審判の判定は「イン」。
一気に勝負がつくかと思いきや、相手のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)は
ビデオでの再判定を求める「チャレンジ」を宣言。
判定は覆り、セカンドサーブでやり直し。
クズネツォワはタイブレークをものにし、第2セットを6-2で奪い、快勝。

テニスでは、チャレンジは1セットに3回と規定。
タイブレークに入ると1回追加。
審判の判定が正しいと、権利を1回ずつ失っていく仕組み。

米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)にも、
回数を制限したチャレンジ制度がある。
1試合に2回が基本で、2回連続で成功すると、3回目の権利も与えられる。
失敗すれば、タイムアウトの権利を1回失うだけに、
行使する場面の見極めは難しい。

選手の心理面への影響も大きい。
東レ・パンパシの覇者で、今季の全仏や北京五輪で準優勝した
ディナラ・サフィナ(ロシア)は、「審判のミスだとはっきり見えると、
不満やイライラが残る。チャレンジすることで精神的に楽になる」

テニスでは06年の導入当初、相手のリズムを乱すために
行使する可能性を懸念する声もあった。
従来ラケット交換や、抗議を繰り返したりと巧みに心理戦を仕掛ける選手はいた。
制度導入で抗議の時間が減り、選手がプレーに集中できるという効果も指摘。
WTAツアー関係者によると、全体のチャレンジ成功率は30~40%。
選手にとっては、権利をどう有効に行使するかという
戦術的な位置づけも高まっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

0 件のコメント: