2008年10月27日月曜日

考える力(2)五感使いアサガオ表現

(読売 10月22日)

表現力を高めることで、思考力を養う取り組みがある。

アサガオのプランターが6年2組の教壇に載せられた。
「夏のアサガオと、どこが違うかな。感じたことを自由に書いて」と
担任の水野敦司教諭(45)。
「言葉のスケッチ」のテーマは、「夏の終わり」。

浜松市立中ノ町小学校が、朝8時から毎日全校で行っている「さわやかタイム」。
読解力を高める活動にあてているが、中でも、言葉のイメージを膨らませて
短い文章で表す「スケッチ」を重視する。

子供たちはアサガオを見つめると、まもなく鉛筆を走らせ始めた。
5分後、考えた言葉の発表が始まった。
「黄色い」、「枯れている」と見た目の印象から始まり、
「元気がない」と擬人化したり、「寂しさを感じる」と
自分の感情に置き換えたりした言葉が、自然に出始めた。
種に注目した子は、「新しい世代へのバトンパスのように感じます」。

水野教諭は、「アサガオ一つでも、色々な表現がある。
次回はアサガオに限らず、みんなが夏の終わりを感じたことを書いてみよう」

こうした活動がもう20年近く続く。
小野間正巳校長(55)は、「子供の五感を通じて言葉を引き出し、
言葉同士の連想から、1本の糸を作り上げるように文章を紡ぐ作業。
そのうち、感覚を働かせながら考えることが習慣になる」、
「中ノ町の子供は、低学年から文章で書ける力があり、学力の基礎になる。
高学年は、抽象的なテーマも苦にしない。
自分の考えを論理的に話せる子が多い」と自信を見せる。

中国山地にある広島県安芸高田市立刈田小学校は、全校児童53人。
4年の担任、荒田優子教諭(40)は算数で、
思考力や表現力を磨く授業に取り組む。
子供たちに、L字形の図形の面積を求める問題を出した。

「こんな線を引き、式を書いた子がいます。誰か説明できる?」。
発表させたのは、線を書いた子とは別だ。
「ここの長方形と正方形の面積を足したのだと思います」、
「今の発表はいい?理由は?」。
結果が正しいだけでなく、理由を言えた子を「今の説明は上手だね」とほめる。

荒田教諭は、問題を自分で解く、みんなで解く、
発表を評価する時間を、意識した授業を心がける。
「他の子供の解答を読み取らせ、説明したり評価したりすることが、
理解や判断力につながる」

授業改革から4年。
算数で理由をしっかり考える子、人の発表を集中して聞ける子が増えた。
授業中、わからない子にわかる子が、「どうしてわからないのか」を
考えながら教える姿も定着してきた。

「算数には式、図、表、文章など、多くの表現手段がある。
他の子の表現方法を学び、違うように見える式や図が同じ意味を持つことを
理解することが、算数への理解を深める」と荒田教諭。

表現力は、国語の専売特許ではない。
教科の特性を生かした工夫で、考える力と一緒に伸ばすことができる。

◆変わる学力観

新学習指導要領では、小中学校とも総則の中で、言葉の習得や計算など、
基礎的な知識や技能を確実に習得した上で、
その知識や技能を子供が自力で生活の場面に活用するための
思考力・判断力・表現力の育成を提唱。
主体的に学習する態度を養うことも求めた。
こうした力を育てる言語活動や体験活動を重視。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081022-OYT8T00154.htm

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