2008年4月28日月曜日

スポーツと環境~[第3回] 岩崎恭子さん 『できることから始めよう!』

(SSF 08.03.25)

―どのような立場で「スポーツと環境」の問題に取り組んでいるのか?

2007年から、JOCの「環境アンバサダー」をつとめている。
各競技団体の推薦を受けて任命された環境アンバサダーが、現在11人。
私は、日本水泳連盟のスポーツ環境委員をつとめている。
普段から環境問題には興味を持っていたので、
改めて積極的に取り組んでみたいと思いました。

―オリンピックや海外の大会で、環境への取り組みを肌で感じるような経験は?

1992年バルセロナ五輪と1996年アトランタ五輪は、
環境を意識した取り組みは感じられなかった。
5年前にアメリカ留学時、学校や地域でも環境問題への配慮があり、
わずか5年の間に、環境問題が深刻になり、様々な呼びかけがあって、
一般市民の生活の中にまで浸透した。
日本の競泳の大会会場では、昔からごみの分別などの取り組みがあった。
最近は大会前のコーチ会議でも、ごみの分別や省エネについて話し合われる。

―普段の活動の中で、環境に気をつけていることは?

スイマーとして、“水”のことが一番気になります。
指導員として、子どもたちのレッスンを行なっていますが、
子どもたちは「水は水道の蛇口をひねれば出てくるもの」、
「プールに水があることが当たり前」と考えがち。
水も大切な資源であること、プールの維持に水だけでなく電気も使っていることを、
水泳を学ぶ中で考えてもらいたい。

泳ぐことを通じて子どもたちが、水の大切さを自ら気がつくように
質問したり、話をしたりしています。

私自身小さい頃から、「物を大切に」と教えられてきた。
一人暮らしを経験したことで、ごみの分別やリサイクルなど
「自分にできる環境への貢献って何だろう?」と考えるように。
環境問題って色々な説や考え方があり、
昨日まで推奨されていたことが今日は意味がないということも。
割り箸を使わないため、「マイ箸」の利用がすすめられている一方で、
割り箸を積極的に使った方がいいという考え方も。
そこが環境問題の難しさであり、報道の難しさ。

できること、身近なことから始めるのが大切。
無理せず自分で取り組みやすいことのほうが、結局は長続きする。

―子どもたちへの指導の他に、アスリートとして、環境問題を訴える活動は?

2007年の競泳日本選手権で、試合後に選手がエコを訴える
メッセージ入りの横断幕を持ってPR。
アスリートから環境メッセージを打ち出すという意味で、
現役選手が出てくるのは、水泳連盟としても初めての試み。
こうした活動が、観る人だけでなく、選手にとってもいいきっかけに。
「自分たちの言葉や行動は、世の中へのメッセージになるんだ」と。
環境アンバサダーとして、新聞や雑誌で発言する機会をいただきました。
これからも、水泳の素晴らしさや環境保全をもっと広めていきたい。

―水の環境という意味では、プールの他に海や河川もある。
SSFでは、「湘南OWS(オープンウォータースイミング)」を開催。
自然環境の中で泳ぐOWSについては、どうお考えですか?

2008年の北京オリンピックでOWSが正式種目になって、
日本だけでなく世界の注目が集まる。
一方で、選手が泳ぐ環境の汚染問題も心配。
私はプール専門で、OWSは泳いだことがない。
2001年に福岡OWS大会を見に行き、湘南OWSもぜひこの目で見たい。

シドニーオリンピック銅メダリストの中尾美樹さん(女子背泳ぎ200m)は、
現在ライフセービングに転向して活躍。
海で泳ぐと、自然環境の変化がより肌で感じられる。
OWS大会の前には、必ずビーチクリーンをして砂浜をきれいにする。
自分たちのスポーツ環境は自分たちで守る、という考え方は選手に必要。

―湘南OWSの開催前にも、ボランティアがスタート及びフィニッシュ会場の
砂浜を広範囲にわたって清掃。
ビーチクリーン活動で、2007年はなんとパソコンが捨てられていた。

すごいですね!海の環境問題も、年々深刻になっていると聞いています。
でも、ボランティアの活躍は素晴らしいなぁと思います。
どんなスポーツイベントも、ボランティアの力なしでは成り立たない。
アメリカに留学していた頃は、スポーツだけでなく、生活の場でも
ボランティアや地域の人どうしが力を合わせるのは当たり前。
そういう考え方が根づいている。

ボランティアやチャリティという考え方は、日本ではなじみがないが、
スポーツを通してなら受け入れやすくなるかも。
エコ活動もそうですが、やはり取り組みやすいことから、
自然とその精神を学ぶことができたらいい。

―最後に、スポーツ愛好者へ向けてのエコメッセージを。

レッスン時に子どもたちに伝えているのは、
「今ある環境への感謝の気持ちを大切にしてほしい」ということ。
プールの水もきれいな海も、当たり前にあるものではなく、
その場を利用してスポーツをする自分たちが守っていかなければいけない。
これは、どんなスポーツでも同じ。
まずは身近なことから、できることから始めましょう!

http://www.sfen.jp/opinion/athlete/03.html

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