2009年1月31日土曜日

現場再訪(10)地域に愛着 自前教師

(読売 1月22日)

自治体が自前で教師を養成するには、工夫が必要になってきた。

スーツ姿の教師の“卵”たち23人が昨年12月、
現役教師の話に熱心に耳を傾けていた。
東京都杉並区が始めた「杉並師範館」。
修了すれば、区の小学校教師として採用。
3期生は、この日は「特別活動の指導」をテーマに約7時間かけ、
18人の教師から指導法を伝授。

教員の人事権は都教委にある。
優秀な教員もいずれ転出してしまう。
自前で手をかけた人を自前で採用したいと区が始めた師範館の卒塾生は、
この2年で46人が教壇に立つ。
学生より、現場を経験して入塾した人の方が多い。
富士通出身で、独立行政法人「メディア教育開発センター」特定特任教授の
山村弘塾長(62)は、「塾生はどこに出しても恥ずかしくない」

卒塾生の1人、川上真理子さん(24)は昨春、区立杉並第六小学校で
2年生の担任になった。
「師範館で学んだ子供への接し方を生かしている。
区の教師になることで、地域に愛着がわき、熱意を持って続けられる」と
地域密着の効果を語る。
鈴木清子校長(60)は、「教育を重視する区の願いから生まれた先生たち。
その思いを感じて頑張ってほしい」

自前で養成する分、教師の配置は手厚くなり、区教委は今年度から
都内では初めて、30人程度学級を始めた。
4期生まで巣立てば、その数は約100人に。

それ以降は未定。
区が全額負担する給与は、100人で年約5億円にもなり、負担は退職まで続く。
応募者も、最初2年は200人を超えたが、その後はやや減っている。

東京都教育委員会による大学生対象の「東京教師養成塾」は、
杉並区より2年早く始まった。
4年間で367人が修了し、都内の公立小で教師に。

都教委では2007年、卒塾生が勤める約100校の校長に、
他の同年代の教師と18項目で比較する調査を実施。
その結果、特に「熱意と使命感」、「授業づくりへの意欲」、
「初任者研修等での若手のリーダー役」などで卒塾生の評価が高かった。

今年度からは、募集枠を50人増の150人に増やした。
都内15校からの推薦に限っていた対象大学も、他県を含む19校に拡大。

「新人でも、いじめや不登校で、保護者や児童への実践的な対応が求められている」
(都教職員研修センターの古屋真宏主任指導主事)として、
選抜方法も、これまでの個人面接から集団面接と小論文に変え、
コミュニケーション能力や課題解決力の高い教師を増やそうとしている。

都の教員採用試験の競争倍率は、小学校ではピーク時の15・3倍(1996年度)
から今年度は2・2倍にまで下がった。
杉並区や横浜市など、近隣自治体でも同様の塾ができた。
効果をもたらす教師の囲い込みには、工夫や財源が必要に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090122-OYT8T00263.htm

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