(読売 1月21日)
地方の大学から大都市圏の教員をめざす傾向が続いている。
「東北出身の先生たちは評判が良く、校長が欲しがります。
皆さんの先輩がいい実績を上げてくれている。
ぜひ続いて、埼玉の子供たちに力をつけてほしい」
津軽平野に初雪が降って間もない昨年11月下旬、
埼玉県教育委員会小中学校人事課管理主事の本荘真さん(44)が、
弘前大学教育学部の学生ら約40人を前に熱弁をふるっていた。
「埼玉も田舎。関東の子供も東北と違わない」と、先入観を取り払い、
「地元と併願で、第1志望でなくてもいいから」と必死。
同大には、相前後して、さいたま市、千葉県、栃木県の各教委が説明に。
今月には、神奈川県内の学校に勤務する卒業生との懇談会も開かれた。
弘前大では2005年から、教員採用試験を受ける学生に
チャーターバスを出すなど、学生の首都圏受験を積極的に後押し。
その結果、1都3県4政令市での大学院生を含む合格者は、
05年37人、06年36人、07年45人、08年55人と近年、急増。
採用者は、06年春33人、07年春25人、08年春32人で、
急増した分、辞退者も多い。
今春もこの傾向は続く見通し。
試験に合格しても、東北地方を中心にした地元の学校で臨時講師になったり、
民間企業に就職したりする学生が多い。
同学部就職対策委員会委員長の宮崎秀一教授(55)は、
「受験自体への抵抗感は薄れてきているようだが、
最後の決断への壁は依然厚い」と痛しかゆしの表情。
説明会に出席していた片方麻衣さん(21)(3年)も、
「先輩も多く就職しており、(試験日程がずれている)出身地の岩手と
併願を検討したい」と言いつつ、「関東への抵抗感はある」と認める。
青森県の08年度教員採用倍率は16・5倍で、全国で3番目に高い。
縁故採用汚職が発覚した大分県をわずかながら上回る。
地方での正規教員就職は夢のまた夢、という状況が続いている。
一方、大量退職時代を迎えている大都市圏の倍率は、
川崎市(3・5倍)、大阪市(3・7倍)、千葉県(4・5倍)、埼玉県(5・6倍)と低い。
今春、3000人規模の採用が予想される東京都教委。
来春に向けて来月、都内の小学校を見学するバスツアー
「東京の先生になろう」を初めて開く。
東北地方の教員志望者に向けた企画。
都教委では、「大量退職はあと5年くらいは続く」
しかし、売り手市場は期間限定的でもある。
大都市圏では、私大を中心に教員養成課程の定員を増やす動きが目立つ。
児童生徒数の減少もあり、一時的な教員不足は、やがて解消されると見られ、
大都市圏でも将来、パイの奪い合いになっていく可能性がある。
「都会に行けば先生になれる」――そんな夢も、いずれは、
揺らいでしまうことになるかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090121-OYT8T00293.htm
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