2009年1月30日金曜日

細胞の働き利用するPET検査 Dr.中川のがんを知る 実践編63

(毎日 2009年1月20日)

PET検査(ペット、陽電子放射断層撮影)をご存じでしょうか。
放射性物質を含む薬剤を注射し、がんに集まる放射性物質から出る
放射線を検出する装置。

がんの診療では、ブドウ糖に放射性物質を化合させた薬を注射。
がん細胞は、ブドウ糖をエネルギーにして増殖、
放射線を出す薬剤はがん細胞に集まる。
体から出てくる放射線を検出すれば、がんの有無をチェックできる。

このPETは、今やがん診療の現場には欠かせない存在。
CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)といった
最新の画像検査もあるが、これらは「病巣の形」にもとづく診断。
PETは、栄養を必要とするといった「細胞の働き」を利用して診断。

実際、腫瘍が疑われる場合の悪性か良性かの区別、治療の効果の判定、
治療後の再発の有無や転移の広がりの評価など、
がん診療の多くの場面でPETは役立つ。
放射線治療でも、放射線を照射する範囲を決めるためPETは欠かせない。

しかし問題も。
一番難しいのは、がんがすべてPETで検出できるとは限らないこと。
胃、腎臓、膀胱、肝臓、胆道、前立腺など多くのがんでは、
がん病巣が存在してもPETでは見つけられないことが多い。
同じ乳がんでも、患者さんによって陽性になったり陰性になったり。
PETだけでは、がんがあるかどうかの判断はできない。
特に、陰性になった場合、「がんがない」と言いきれない。

がんのPET診断が一時ブームになったが、
「PETで陰性だから安心」とは言えない。
実際、がんのPET診断は、欧米では、ほとんど行われていない。

一方、一度陽性と分かったがんについては、
治療の効果の判定や再発の有無の判断に、とても便利な道具。

がんと診断された場合は、治療前に一度PETを受け、
がんが陽性と検出されるかを確認しておくことをお勧め。
(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86590/

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