(毎日 2009年1月20日)
PET検査(ペット、陽電子放射断層撮影)をご存じでしょうか。
放射性物質を含む薬剤を注射し、がんに集まる放射性物質から出る
放射線を検出する装置。
がんの診療では、ブドウ糖に放射性物質を化合させた薬を注射。
がん細胞は、ブドウ糖をエネルギーにして増殖、
放射線を出す薬剤はがん細胞に集まる。
体から出てくる放射線を検出すれば、がんの有無をチェックできる。
このPETは、今やがん診療の現場には欠かせない存在。
CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)といった
最新の画像検査もあるが、これらは「病巣の形」にもとづく診断。
PETは、栄養を必要とするといった「細胞の働き」を利用して診断。
実際、腫瘍が疑われる場合の悪性か良性かの区別、治療の効果の判定、
治療後の再発の有無や転移の広がりの評価など、
がん診療の多くの場面でPETは役立つ。
放射線治療でも、放射線を照射する範囲を決めるためPETは欠かせない。
しかし問題も。
一番難しいのは、がんがすべてPETで検出できるとは限らないこと。
胃、腎臓、膀胱、肝臓、胆道、前立腺など多くのがんでは、
がん病巣が存在してもPETでは見つけられないことが多い。
同じ乳がんでも、患者さんによって陽性になったり陰性になったり。
PETだけでは、がんがあるかどうかの判断はできない。
特に、陰性になった場合、「がんがない」と言いきれない。
がんのPET診断が一時ブームになったが、
「PETで陰性だから安心」とは言えない。
実際、がんのPET診断は、欧米では、ほとんど行われていない。
一方、一度陽性と分かったがんについては、
治療の効果の判定や再発の有無の判断に、とても便利な道具。
がんと診断された場合は、治療前に一度PETを受け、
がんが陽性と検出されるかを確認しておくことをお勧め。
(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86590/
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