2010年8月25日水曜日

国際水準に達した国内学術誌は可能か

(サイエンスポータル 2010年8月9日)

日本学術会議の学術誌問題検討分科会が、
国内の研究者が海外の学術誌を自由に読めなくなっている
現状に対し、早急な対応を求める提言を発表。

研究者のボランティア活動や公的支援に頼っていた日本と、
いち早くビジネスモデルづくりに成功した海外大手出版社との
違いに加え、IT化が決定的な差をつくったことが指摘。
提言から、日本の学術誌、研究者の苦境を示す実態を見てみたい。

20世紀半ば以降、海外の大手商業出版社は、
学術誌の市場を大きなビジネスチャンスととらえ、
学術誌の出版権を次々に入手するとともに、
市場の独占を進めていった。

学術誌の電子媒体化の加速的進行により、
学術誌商業出版社は巨大なプラットフォームを構築し、
多くの学術誌を同時かつ瞬時に処理できるようになり、
出版権の拡大をより容易にした」

これに対し、日本の学術誌はどうか?
「(1)学術団体が独自に出版、
(2)制作・広報・販売など部分的に国内外の出版社に委託して出版、
(3)制作・広報をJST(科学技術振興機構)や
NII(国立情報学研究所)など公的支援を受けて出版、
という3つに大別。
JSTやNIIが、電子ジャーナル化やパッケージ・ポータル化を推進、
いまだ学術誌による発信力が国際水準に達していないのが現状

JSTは、J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)により
電子化を支援、583の国内学術誌が電子ジャーナルとして刊行、
そのうち449誌が無料で閲覧。

NIIも、NII-ELS(学術団体が刊行する学術誌を電子化し、
蓄積・提供する電子図書館)によって、1,069の国内学術誌が電子化、
そのうち583誌は無料で一般公開(2009年現在)。

大手商業出版社や大手学会出版が、主導的な役割を果たしている
海外とは、だいぶ様相が異なる。

結果として、「学術誌による発信力が、国際水準に達していない」
現状を招いてしまった。
提言は、理由の一つとして「学術全体もしくは各学術団体が
それぞれの分野の発展の姿に合わせて、
学術情報発信システムを自ら設計・推進することに対し、
科学者視点に立ち、合理的かつ効果的に支援する場が
無かったこと

現状の改善が容易でないことを伺わせる、さらに具体的な記述。
「学術誌にとって、掲載されている論文の質を高めることが
最重要であることは論を待たない。
欧米では、編集長はその学術誌の顔であり、
人選は慎重に行われ、学術誌によっては専任の編集長を置く。
その責任をまっとうするため、任期も長い。

わが国では、2~3年で交代することが多く、
学術誌の顔となること、編集長のリーダーシップによる
戦略的な将来設計を行うことが難しい。

欧米では、編集長もしくは編集委員をサポートする人材として、
学位取得者のスタッフが雇用されることが多く、
人材には相応の責任と待遇が与えられている。

わが国では、一部に専任編集長の雇用や、
編集長の任期長期化の試みが見られるものの、
基本的に短期間で交代するため、
長期的な戦略性が見られることは少ない。
編集スタッフは、学術団体の会員で構成される編集委員会の
お手伝い的な編集事務の扱いにとどまっていることが多い。
わが国では、学術の進展と変化に応じ、世界に伍して
編集を牽引できる専門家がほとんど存在していない」

一般向け科学雑誌の編集長が務まる人材は、日本にもいる。
学術誌の編集長を本業にしたいという人が、果たしてどのくらいいるか?
日本の研究者、基礎研究者の多くが、
「ネイチャー」、「サイエンス」などに欧米の著名科学誌に
論文が載ることを望んでいる。

提言が求める「国際的に通用するリーディングジャーナルの育成」
一つとっても、実現は容易でない。

http://www.scienceportal.jp/news/review/1008/1008091.html

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