2010年8月28日土曜日

だるさ・食欲不振・無気力…夏バテを科学する 特集ワイド

(2010年8月19日 毎日新聞社)

毎日、うだるように暑い。
体がだるい、食欲もうせ、ボーッとして気力がわかない、
なんていう人も多いのでは。
そもそも夏バテとはどんな症状?
なぜ夏は体調を崩しやすいの?

Q 暑いと、体がだるく、食欲がなくなったり、やる気が低下したり、
夏バテの状態になる。なぜ、夏は体調を崩しやすいのか?

A 夏バテには、はっきりとした定義はない。
北陸大学薬学部臨床薬学教育センターの中川輝昭教授によると、
いくつかの特徴的な症状がみられた場合、夏バテといわれる。

(1)体温調節の不調。
ヒトは、体温が36~37度の時が一番活動しやすい。
暑くなると、血管が拡張して汗を出し体温調節を行うが、
湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、熱が体内にこもり、
疲れやすくなる。
冷房の利いた室内と、暑い屋外との温度差が大きいと、
体温を調節するリズムが乱れ、自律神経失調症を起こしやすい。

(2)体内の水分・ミネラル不足。
気温が上がり、たくさん汗をかくと、体内の水分と一緒に、
ミネラル分も排出され、体内の電解質バランスが崩れ、
脱水症状を起こす。
体調に異常を起こしてしまう。

(3)食欲低下、栄養不足。
暑さが続くと、胃の消化機能が低下し、栄養の吸収が悪くなり、
食欲不振を起こす。
栄養の吸収が悪いと、ビタミン類やたんぱく質、ミネラルなど
体に必要な栄養素も不足がちになり、だるく感じたり、
根気が続かなくなったりする。
冷たい物ばかり取ると、胃腸が冷え、胃の消化酵素の働きが低下し、
消化不良を起こし、食欲がなくなるという悪循環に。

Q 夏は、なぜ寝苦しいのか?

A 快適に眠るためには、室温が25度前後、湿度は40~60%が最適。
エアコンの風に直接当たると、体温が奪われ、健康には良くない。
室温は、多少高くても除湿をすれば、寝苦しさは多少解消。
寝付かれないとき、牛乳をコップ1杯飲むと良い。
牛乳のカルシウムには、鎮静作用がある。

Q 平熱の高低や、太っているかなどで、暑さの感じ方は違うの?

A 夏に強いか弱いかは、感覚や環境などの要因も関係。
体温や体形で、一律に判断はできない。

自律神経失調症の人は、体温調節がうまくできないため、
夏バテになりやすい。
自律神経失調症気味の人には、体温の低い人が多い。
体温の高い人は夏に強い、と言われるのかも。

Q 女性と男性で、冷房の感じ方が違うのはなぜ?

A 体温は、内臓や筋肉の活動により作られる。
女性の方が、男性より筋肉が少ないため、
同じように熱を作れず、冷えに弱い。
夏もスーツを着用している男性の快適温度は約20度、
薄着の女性は約28度。
8度もの差がある。

Q 「夏」風邪と、わざわざ呼ぶのはどうして?

A 風邪のほとんどは、ウイルスの感染が原因。
ウイルスの数は、200種類以上。
ウイルスは、インフルエンザウイルスなど、寒くて乾燥した
環境を好むものが多いが、暑くて湿度の高い夏のような
環境が好きなウイルスも。

アデノウイルスは、のどの痛みや頭痛を訴え、
39度以上の高熱が続く、俗に「プール熱」と呼ばれる症状や
結膜炎、急性胃腸炎を引き起こす。
エンテロウイルスに感染すると、手のひら、足裏、口内に
水疱が出る手足口病や、高熱とのどの痛みのある
ヘルパンギーナなどになる。

ウイルス感染した場合、インフルエンザなど冬の風邪と
区別する意味で、「夏風邪」と呼んでいる。
「夏風邪」は、冬の風邪に比べ、胃腸障害を伴うことが多い。

Q のどが渇いたとき、冷たい物を飲む方がいい?

A のどが渇いた時、すでに脱水症状が起きている。
冷たい飲み物の方が温かい飲み物より、胃から腸への
到達時間が短いので、渇きが早く潤す。
あまり冷たい物ばかり飲んでいると、消化不良などの
原因にもなるので、飲み過ぎは良くない。

Q 水分補給はビールでも大丈夫?

A ビールに含まれるアルコールには、利尿作用があるため
尿の量が増え、水分がたくさん出て水分不足に。
効果的ではない。

Q 夏に増える怪談話。聞くと涼しくなるの?

A 怖い話を聞いたり、恐ろしい体験をしたりすると、
背筋がゾゾゾッとして寒気がし、体がひんやりする。
冷や汗をかいたり、鳥肌が立ったりすることによる。
その時、皮膚は冷たくなっており、皮膚の血管が収縮するなど
寒い時に起きる反応と同じなので、涼しく感じる。

Q 夏によく食べる物で、ウナギと梅干し、天ぷらとかき氷、
あるいはスイカ--などは食べ合わせが悪いと言われるが、どうして?

A 現代医学と漢方の両面から、食べ物の研究をしている
「東医食治研究会」会長で薬学博士の田村哲彦さんによると、
「ウナギは脂っこさと、梅干しの酸味が刺激しあって、
消化不良を起こすことがある」
一部、「梅干しを食べるとさっぱりするので、
つい食べ過ぎてしまいおなかをこわす」からとの説も。
ウナギと梅干しは、現在の栄養学の観点から見れば、
決して悪くはない。

天ぷらとかき氷も、かき氷やスイカなど、
水分の多いものを大量に取ると、胃液が薄まり、
天ぷらのような油ものを消化しにくくする。

食べ合わせでいけないものとは、胃腸があまり強くない人が、
気をつけたほうがいい組み合わせ。
「胃腸が丈夫な人は、何を食べても大丈夫」だ。

Q 体に悪い食べ合わせは夏に多い気がするが、夏だけなのか?

A 衛生上、食中毒や疫病は夏場に起こりやすい。
食べ物から気をつけようということ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/19/124222/

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