2009年10月5日月曜日

【五輪遠く】(中)「JOCは強くならないと」再挑戦も厳しい

(産経 2009.10.4)

2016年夏季五輪開催地を決めるIOC総会を終え、
コペンハーゲンから帰国途中のチャーター便の機内放送に、
突然、石原慎太郎都知事の声が流れた。

「遠いところまで、応援に駆けつけてくれた日本のみなさん、
本当に本当にありがとうございました。
残念な結果となりましたが、みなさんの気持ちは十分に伝わりました…」

チャーター便には、1泊4日の“弾丸”日程で、
東京の応援に駆けつけた約240人。
放送後、知事は客席を回り「ありがとう」、「お疲れさま」と
声をかけると、逆に大きな拍手で励まされ、
目に涙を浮かべてこれに応えた。

「同胞の熱い心のきずなを久しぶりに感じ、
気持ちのいい涙を流した」
強いリーダーシップで招致活動を牽引しただけに、
感情的になった一面を見せた知事。

だが、これからの都政運営では多くの課題が待ち受ける。
直面するのは、今回の招致活動の総括。

五輪招致活動費150億円のうち、100億円は公費。
都議会で、招致活動の実態が追及されることは必至で、
知事は「当然、都民の前に明らかにするのは最低限の責任」、
検証に前向きな姿勢を示した。

中央区晴海のメーンスタジアム建設予定地と、
都が積み立てた4000億円の五輪開催基金をどうするかも、
「頭の痛い重大な問題」(都幹部)。
20年五輪への再挑戦の判断がつかない中、
担当者は「土地は都有財産で、これ以上、
遊ばしておくわけにいかない」

土地の活用法について、知事は「民間企業の知恵を借りる」と
話したが、詳細は未定。

都議会では、第1党に躍進した民主が先月、
新銀行東京の経営責任追及と、築地市場の現地再整備を
再検討する2つの特別委員会を設置。
都幹部は、「五輪招致の前向きなムードが終わり、
知事が守勢に回る場面が増えるのでは」
知事は、求心力維持に手腕が問われる場面を迎えることに。

3年間に及ぶ招致活動を通し、得たものも少なくない。
知事は、「新しいフルーツにはならなかったが、苗を植えた」と、
新たな政策の構築に言及。
深刻化する地球の環境問題を国内外にアピールできたことは
その最たるもので、IOC総会に出席した鳩山由紀夫首相を、
「オバマ(米大統領)よりはるかに良かった。
またとない助っ人になってくれた」と持ち上げ、
「環境の東京」を訴えられたからにほかならない。

東京都の環境対策は、知事がプレゼンテーションで訴えたように、
今後、港湾施設などで太陽光発電の活用を拡大。
マウンテンバイクなどの会場となるはずだった
江東区青海沖の埋め立て地は、「海の森」として植樹を進める。

JOCをはじめ、スポーツ界は、「東京以外に勝てる都市はない」と、
再挑戦を願う思いは根強い。
「JOCは、もっと強くならないと。
推進力のある人間をIOCに送り込まない限り難しいなと痛感」と知事。

JOC理事でもある招致委の河野一郎事務総長は、
「手の届かないエリアが確かにあった。
そのエリアをどう狭めていくか」と受け止めるしかなかった。

IOCに太いパイプを作ることは容易ではない。
しかし、知事の指摘に答えを出せなければ、「夢」の実現は難しい。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091004/oth0910042016017-n1.htm

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