(産経 2009.10.4)
2016年夏季五輪開催地を決めるIOC総会を終え、
コペンハーゲンから帰国途中のチャーター便の機内放送に、
突然、石原慎太郎都知事の声が流れた。
「遠いところまで、応援に駆けつけてくれた日本のみなさん、
本当に本当にありがとうございました。
残念な結果となりましたが、みなさんの気持ちは十分に伝わりました…」
チャーター便には、1泊4日の“弾丸”日程で、
東京の応援に駆けつけた約240人。
放送後、知事は客席を回り「ありがとう」、「お疲れさま」と
声をかけると、逆に大きな拍手で励まされ、
目に涙を浮かべてこれに応えた。
「同胞の熱い心のきずなを久しぶりに感じ、
気持ちのいい涙を流した」
強いリーダーシップで招致活動を牽引しただけに、
感情的になった一面を見せた知事。
だが、これからの都政運営では多くの課題が待ち受ける。
直面するのは、今回の招致活動の総括。
五輪招致活動費150億円のうち、100億円は公費。
都議会で、招致活動の実態が追及されることは必至で、
知事は「当然、都民の前に明らかにするのは最低限の責任」、
検証に前向きな姿勢を示した。
中央区晴海のメーンスタジアム建設予定地と、
都が積み立てた4000億円の五輪開催基金をどうするかも、
「頭の痛い重大な問題」(都幹部)。
20年五輪への再挑戦の判断がつかない中、
担当者は「土地は都有財産で、これ以上、
遊ばしておくわけにいかない」
土地の活用法について、知事は「民間企業の知恵を借りる」と
話したが、詳細は未定。
都議会では、第1党に躍進した民主が先月、
新銀行東京の経営責任追及と、築地市場の現地再整備を
再検討する2つの特別委員会を設置。
都幹部は、「五輪招致の前向きなムードが終わり、
知事が守勢に回る場面が増えるのでは」
知事は、求心力維持に手腕が問われる場面を迎えることに。
3年間に及ぶ招致活動を通し、得たものも少なくない。
知事は、「新しいフルーツにはならなかったが、苗を植えた」と、
新たな政策の構築に言及。
深刻化する地球の環境問題を国内外にアピールできたことは
その最たるもので、IOC総会に出席した鳩山由紀夫首相を、
「オバマ(米大統領)よりはるかに良かった。
またとない助っ人になってくれた」と持ち上げ、
「環境の東京」を訴えられたからにほかならない。
東京都の環境対策は、知事がプレゼンテーションで訴えたように、
今後、港湾施設などで太陽光発電の活用を拡大。
マウンテンバイクなどの会場となるはずだった
江東区青海沖の埋め立て地は、「海の森」として植樹を進める。
JOCをはじめ、スポーツ界は、「東京以外に勝てる都市はない」と、
再挑戦を願う思いは根強い。
「JOCは、もっと強くならないと。
推進力のある人間をIOCに送り込まない限り難しいなと痛感」と知事。
JOC理事でもある招致委の河野一郎事務総長は、
「手の届かないエリアが確かにあった。
そのエリアをどう狭めていくか」と受け止めるしかなかった。
IOCに太いパイプを作ることは容易ではない。
しかし、知事の指摘に答えを出せなければ、「夢」の実現は難しい。
http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091004/oth0910042016017-n1.htm
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