2011年7月17日日曜日

復興計画8月末以降に 地区別図案に課題多く 「二線堤」構想に唐突感も

(東海新報 7月16日)

大船渡市は、市災害復興計画の策定時期が
8月末以降にずれ込む見通し。
国の復興施策審議が予想よりも遅れる中、市では再度地区別に
懇談会を開催、住民の意向把握を進める考え。

土地利用の「たたき台」として復興方針図案を示したが、
かさ上げする道路の高さや居住可能区域の範囲など、議論の余地を多く残す。
市が強調する「復興のスピード感」と、住民の合意形成を得た
将来像確立との両立に向け、正念場を迎えている。

県内被災地自治体の中でいち早く、復興施策づくりに着手した大船渡市。
震災から12日後の3月23日、庁内に災害復興局を新設。
4月以降、住民意向調査の実施や復興計画策定委員会の開催など、
早期策定を目指して積極的に取り組んできた。

各種施策の指針となる復興計画骨子は、住民懇談会や
復興計画策定委などによる議論を経て、今月上旬にまとまった。
具体的な事業内容を盛り込む復興計画は、今月末の策定を目指していた。

市では、計画策定時期を8月末以降。
計画実施に国の予算支援が欠かせない中、復興施策の財源となる
第3次補正予算が秋以降に。
国の動向を判断しながら、策定作業を進める。

この間、再度地区別の住民懇談会を開く。
住民の意向を、再度把握しなければならない課題も。

第3回復興計画策定委で初公表した、復興方針図案。
図案はあくまでも、議論に入る前段階の「たたき台」として用意。
今後、図案内容が大きく変更する可能性も。
半面、この認識の裏を返せば、現段階では甘さや問題点が多い。

これまで、「再び津波が来ても人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げ、
その一つとして高台に住居移転する構想。
復興図案でも、高台移転の候補地を示しているが、
浸水域の多くが居住可能な地域。

浸水域の住宅を守る機能として盛り込まれたのは、道路のかさ上げ。
沿岸部を通る道路を盛り土などで高くすることで、
津波を食い止める「二線堤」の考え。

今回、末崎町の船河原海岸沿いに位置するJR線の線路が
「防波堤」となり、山側に広がる住居地域の被害を軽減。
道路自体の浸水被害も抑え、交通アクセス確保も期待できるが、
実現化には議論の余地を多く残す。

道路のかさ上げは、復興計画策定委員からも「唐突では?」
先月の市議会定例会では、国道45号のかさ上げに言及した
当局答弁はあったが、海側の道路には踏み込んでいない。

二線堤による減災対策は、東日本大震災復興構想会議が
菅直人首相に答申した提言に盛り込まれた。
この提言や国の動向をふまえた上で、市内では“初披露”。

図案でのかさ上げは、主要地方道大船渡綾里三陸線、
県道丸森権現堂線、門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線が検討候補に。
高さの具体的な数値はなく、「さらに山側の線路や国道が
検討対象になる可能性もある」

2巡目の住民懇談会では、道路や土地利用のあり方が議論の柱に。
どの道路をかさ上げするかで、居住可能区域は大きく変わり、
住民生活にも大きく影響。
計画策定から、スムーズな事業着手に入るためには、
住民の合意形成が欠かせない。

多くの住民がマイカーを持ち、道路位置のあり方は、
まちづくりや商業地図にも大きく影響。
今後、数十年を見据えた地域社会形成の視点と防災の両立が
求められる中、計画策定時期を8月末以降に延ばしたとしても、
残された時間は決して長いと言えない。

さらに計画策定を遅らせれば、復興ムードの醸成や経済活動の
再開にも支障をきたすことが予想。
これからの1カ月半が、市内復興の正念場となりそう。

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