2011年7月21日木曜日

政府の「医療イノベーション」推進

(2011年7月12日 読売新聞)

「ドラッグ・ラグ」が問題になっているけれど、
解消に向けた取り組みは進んでいるのだろうか?

ドラッグ・ラグとは、日本では新薬の承認が欧米より遅く、
海外では一般的に用いられる薬でも、
国内の患者がなかなか使えない状態を指す。

2007年の世界売り上げ上位品目について、医薬品産業政策研究所が
調査会社IMSのデータを基に分析した報告では、
新薬が世界で初めて発売された時点から、日本で発売されるまでの
平均期間は4・7年。
世界で最初に発売される薬が、近年多い米国の1・2年などと比べ、
大幅に遅い。

日本では、薬の効果や安全性を調べる臨床試験や、
その結果を基にした公的な審査に時間がかかる。
製薬企業側も、審査が早い欧米で先に臨床試験に着手しがちに
なっていることなどが、遅れの原因として指摘。
その結果、経済的な面でも、医薬品や医療機器の分野は大幅な輸入超過。

こうした状態を解消しようと、政府は「医療イノベーションの推進」に
力を入れ始めた。
産学官が連携し、がんや認知症などの画期的新薬や新しい治療法を
世界に先駆けて開発しようという構想。
国内の患者に、新薬などを早く届けると共に、
医療分野で国際競争力を高める狙いもある。

政府は昨秋、新成長戦略に基づいて「医療イノベーション会議」を設置、
6月に決定した社会保障・税一体改革案にも推進方針を盛り込んだ。

同会議は、基礎研究から実用化まで切れ目ない支援をするため、
大胆な予算投入と規制改革を行う方針。
重点分野には、
〈1〉医薬品、
〈2〉医療機器、
〈3〉失った体の組織や機能をよみがえらせる「再生医療」、
〈4〉一人一人の体質に合わせて治療を選ぶ「個別化医療」--を挙げている。

すでに薬の審査に当たる職員の増員は始まり、
臨床試験の拠点病院を、3年以内に15か所指定する方針。

東日本大震災などで財政が厳しい中、どれだけ重点分野に
予算を投入できるかは不透明。
新薬発売を急ぐあまり、安全性が軽視されることもあってはならない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/12/139239/

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