2009年7月12日日曜日

ウォルト・ディズニー・ジャパンのキャンドランド社長 「BS、大人の女性を想定」

(日経 7月2日)

BSデジタル放送のチャンネル追加など、
外資メディアはどう対応するのか?
ウォルト・ディズニー・ジャパンのポール・キャンドランド社長に聞いた。

——新BSに免許申請したが、チャンネル獲得には至らなかった。

「申請段階で、多数の視聴者にインタビュー。
具体的な番組表を示したところ、前向きな反応が多く、大きな手応え。
それだけに失望は否めない。
外資に、参入のチャンスが与えられたことは有り難い」

——どのようなチャンネルの構想だったのか?

主な視聴者を、大人の女性であるF2(35歳—49歳の女性)層に設定。
ドラマや映画で編成する無料チャンネル。
ターゲットを明確にして、差別化する戦略」

「BSデジタルは、極めて高い可能性を秘めた放送基盤。
すでに複数の民放系無料チャンネルもあるなかで、
多様な視聴者層を狙った総合編成では、成り立たせるのが難しい」

——総務省は審査で、日本での実績や事業計画の実現可能性を重視。

「『東京ディズニーランド』が25年以上も成功するなど、
ディズニーはファミリー・エンターテインメント・カンパニーとして、
日本で約50年の実績を重ねてきた。
CS『ディズニー・チャンネル』も、開局して6年近く。
保有するCSの2チャンネルの合計視聴世帯は900万に」

「ディズニーのテレビ部門は、08年度の連結売上高で43%、
利益の56%を稼ぎ出した。
テレビ事業を世界で手がけてきた経験から、
日本でも十分成功できる自信を持っている」

——広告収入を前提とする無料放送での申請が不利に働いた。

無料放送でも、F2層に的を絞れば、ディズニーのほかの事業との
シナジー効果が期待。
チャンネル単独でも、十分な広告収入を上げる自信。
海外では、無料放送と有料放送、混合型も運営し、
その経験を日本でも生かせるはず」

「広告収入の実績も皆無ではない。
テレビ東京系などで、30分のアニメーションの放送枠を
週3枠持っているが、10億円弱のCM収入。
約2兆円の広告市場に占めるBSのシェアは2%。
民放系のBS全局が黒字化。
BSという放送基盤は、それだけ効率が高い。
地上波のシェアを奪えれば、成長余地が大きくなる」

——総務省は来年5月、BSなどで新たなチャンネルを追加募集する。
再挑戦するか?

「詳しい話を聞いてない。現段階では何も言えない」

——日本でも無料放送が不可欠で、基盤はBSデジタルが有力。

BSはディズニーにとって、日本のメディア事業で欠けた
パズルのピース。
日本での顧客の柱は2つ。子供と大人の女性。
女児や男児向けのCSの有料チャンネルを2つ運営。
BSがあれば、F2層に効果的にコンテンツを届けることができる。
携帯電話事業『ディズニー・モバイル』は、契約者の70%以上が
大人の女性。テーマパークの利用者も、70%以上が大人の女性」

「BSに参入できれば、ディズニーの映画事業にも利点が大きい。
日本の地上波テレビ局は、映画制作を強化し、
自らのチャンネルで盛んに宣伝。
(無料放送は)ディズニーの事業全体にとって重要な意味を持つ」

——「ディズニー・モバイル」の実績には満足しているか?

「すべて予定通り。
大量の契約者を想定して参入したわけではない。
ディズニーの体験をファンに、日常的に届けるニッチ(すき間)事業
として始めた。持続的に成長できればいいと考えている」

——テーマパークや関連ホテルも含め、放送を除けば
日本では必要な事業基盤がおおむねそろった。今後の課題は?

ローカルコンテンツ(情報の内容)をさらに増やすこと。
人気アニメ『スティッチ!』では、沖縄県の島を舞台にした
日本版を制作、放送を始めた。
東映アニメーションなどと組み、短編アニメも制作。
ディズニーの海外のネットワークでも放送が始まるなど、
日本製アニメの輸出も始まっている」

◆ポール・キャンドランド

米ワシントン生まれ。ブリガム・ヤング大卒、
ペンシルべニア州立大大学院で経営学修士(MBA)取得。
日本ペプシコーラ代表などを経て2002年、ディズニー日本法人の
テレビ事業部門マネージングディレクター就任。
「ディズニー・チャンネル」などを立ち上げ、07年から現職。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090701.html

0 件のコメント: