2009年7月16日木曜日

上半期ビジネス書 売れ筋から読み解く 自分磨き不況克服

(日経 7月7日)

深刻な不況の中で始まった2009年も、すでに半分。
今年上半期のビジネス書のベストセラーランキングを、
人事・組織分野の有力コンサルタント3人に解説、
ビジネスパーソンが何に関心を持っているのかを探った。

ランキングに数多く顔を出しているのが、
「読書は1冊のノートにまとめなさい」
(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)に代表される自己啓発本

マーサージャパンの長谷川直紀さんは、
「雇用情勢の悪化が背景にある」と分析。

会社にとって欠かせない人材になるため、スキルを高めたい。
こうした思いが、ビジネスパーソンに自己啓発本を手に取らせている。
長谷川さんは、「職を失うことへの危機感が強まっている」

自己啓発本を、2つに分けている。
1つが、スキルアップの方法論を解説した「ハウツー本」
2、3時間で読み終えられる手軽さが特徴。
代表格として、「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」
(大和書房)と「8595原式スピード思考力」(幻冬舎)の2冊。

もう1つが、科学的な知見を基盤にしたグループ。
特に目立つのが、「『脳にいいこと』だけをやりなさい!」(三笠書房)、
「脳を活かす生活術」(PHP研究所)など、
脳科学の研究成果を理解したうえで、自己啓発を目指す本。

長谷川さんは、「内容が深く、自分のあり方を考え直すきっかけに」
こうした本のランキング入りは、不況を機にビジネスパーソンが
内省的になっていることを表している。

雇用情勢の悪化は、企業経営を主題にしたビジネス書の売れ筋に影響。
リンクアンドモチベーションの麻野耕司さんは、
「従業員を大事にする企業や経営者を取り上げる本が売れている」

その象徴が、「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版)、
「俺は、中小企業のおやじ」(日本経済新聞出版社)の2冊。
麻野さんは、「このような経営者のもとで働きたいという、
一種のあこがれを投影したものでは」

景気がよい時期には、大企業や有名企業を取り上げた本に
人気が集まる傾向。
ビジネス書のランキングの変化に目を凝らせば、
景気の先行きが見通せる。

会社にしがみつかず、自立しようとする意識も感じられる。
マーサーの長谷川さんは、「史上最強の人生戦略マニュアル」
(きこ書房)を例に、「自分のキャリアを戦略的につくり上げていこう、
というビジネスパーソンが一定数いる」
不況を、前向きに乗り切ろうという覚悟ができつつある、と分析。

◆若手育てる意識、気迫に

「ビジネスパーソンから、部下を育てる余裕が消えつつあるのでは」
レジェンダ・コーポレーションの藤波達雄さん

今年春、新卒で入社した人たちは、「ゆとり教育世代」と呼ばれ、
コミュニケーション能力や忍耐力、基礎学力に難がある、
といわれることが多い。
「本来なら、彼らを一人前に育てるための本が
ランキングに入っていてもおかしくない」はずだが、
実際には、自己啓発を目的とした本が大半。

成果主義型の人事制度の副作用で、
部下や同僚を手助けする機運が薄れている。
雇用環境悪化が追い打ちをかけ、
「新人を含めた若手社員を、育成する意識が希薄になっている」

◆出版科学研究所の綾部二美代さんの話

昨年秋のリーマン・ショックを境に、ビジネス書の売れ筋は変わった。
外国為替証拠金取引(FX)などの投資を勧める本が上位を占めたが、
今年の上半期は完全に鳴りを潜めた。

代わって、グローバル資本主義や金融危機、米国経済の問題点を
分かりやすく解説しようとする本。
多くの要素が複雑に絡み合っているテーマなので、
多くのビジネスパーソンが真相を知りたい。

自己啓発本も、多くランクインしたことも特徴の1つ。
出版社のマーケティング担当者が売れる本を模索した結果、
学生や主婦なども手に取りやすいノンフィクション的な読み物が、
ビジネス書に分類。
ビジネス書の定義が、拡大しているのかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090707.html

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