(日経 2009-06-27)
高級ワインの市場で、「異例」の事態が。
毎年、春から夏にかけて実施される仏ボルドーの先物予約販売
「プリムール」。
トップクラスのシャトーの2008年産のワインが、
1本2万数千円という価格にもかかわらず、あっという間に売り切れ。
「こんなことは、数年前にプリムールの担当になって初めて」
ワイン輸入販売大手のエノテカ・田村透氏は目を細める。
インターネットの販売サイトに専用コーナーを設け、
5月20日に株主と会員限定で申し込みの受付けを始めたところ、
「シャトー・ラフィット・ロートシルト」、「シャトー・ラトゥール」の
2大銘柄がわずか10分で完売。
当初の価格は、1本26500円(税抜き、12本購入の場合)。
5月21日に約8%値上げして追加販売、その日の内に売り切れ。
現在、ラフィットとラトゥールに並び称されるトップ銘柄
「シャトー・マルゴー」も「在庫なし」。
他の販売会社でも、売れ行きは同様に好調。
ヴィノラム(東京・中央)が運営するサイトでは、
ラフィット、ラトゥールともに第1期、第2期の売り出しが早々に完売、
第3期の現在は第1期のほぼ2倍の価格に値上。
「プリムール」とは、ボルドーで広く行われているワインの販売手法、
樽で熟成中のワインを、市場に出回る約2年前に予約販売。
ワインの販売会社が商品を仕入れるのも、同じタイミングの場合が多く、
その一部が一般消費者に売り出される。
人気沸騰の背景に、昨年までの異常なワインの値上がり。
04年産まで、1本1万円台で推移していたトップシャトーの
プリムール初出価格は、05年産から7万円前後に急騰。
05年のぶどうの出来が並外れて良かったことも影響したが、
06年産も7万円台、07年産も5万円台と高止まり。
中国、ロシアなどの新興国の富豪たちが、高級ワインを買いあさり、
世界の高級ワインの需給が逼迫。
値付けをする醸造元が強気になり、円安・ユーロ高も
円ベースの価格高騰に拍車をかけた格好。
昨秋のリーマンショック以降、高級ワインの売れ行きが世界中で鈍化。
円高・ユーロ安も進み、この春のプリムールは
前年の半値以下で売り出された。
08年産のトップワインには、影響力の大きいワイン評論家の
ロバート・パーカー氏が90点台後半から100点満点の高い評点を
付けたことも人気を後押し。
高額で予約販売された06年産と07年産のワインはどうなるか?
06年産は、この春から市場に出回り始めた。
06年産のラフィットは、ネット販売で最低5万円前後で販売。
パーカー氏の評点は、予約価格の安い08年産の方が上だが、
ワインショップの多くはプリムール時の価格近辺で商品を仕入れ、
08年産の初出価格並みに値下げするのは困難。
「06」と「08」は別物と訴えてみたところで、
消費者は受け入れてくれない。
ボルドーのトップシャトーは、プリムールの過去の購入実績によって、
販売会社への商品の割り当ての数を決める。
どんなに高い価格を提示されても、仕入れ続けなければ、
必要な量を確保できなくなる。
販売会社が、トップシャトーのワインを販売し続けるには、
醸造元の条件をのむ以外にない。
08年産の価格がここまで抑えられたのは、
最初に手ごろな価格で売り出して人気を盛り上げ、
徐々に06年産や07年産並みに価格を引き上げていく、
といった醸造元の戦略。
安くなったといっても、2000年前後の水準と比べ、ほぼ2倍。
そこに飛びついてしまうワイン愛好家の金銭感覚は、
今でも浮世離れしたままなのかもしれない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo090625.html
0 件のコメント:
コメントを投稿