2008年1月18日金曜日

もっと知りたいエコロジー:火のあるくらしを見直そう 木から生まれるバイオマス

(毎日 1月11日)

阪神大震災、ライフラインは止まり、人々は寒さに震えていた。
灯油缶に廃材がくべられ、皆なんとなく集まり暖をとった。
そのたき火の、なんと有り難かったことか。
火は時に脅威ともなるが、同時に人の心を慰める生きもののような存在。

昭和30年代頃までは、日本でも薪や炭が利用。
家庭には七輪があり、お風呂や炊事にも木から火がつくられた。
木や火は、日常の一部分として存在していた。
現在、この薪や炭は木質バイオマスなどと呼ばれ、木材燃料資源の総称。

この冬、ガソリンや灯油の値段があがり庶民の生活を直撃。
現代の暮らしは、化石燃料に頼り切っている。
石油がなくなれば、暖房や電気、ガス、水道すべてに支障を来す。
化石燃料にだけに依存するのではなく、木質バイオマスを見直したい。

木材素のままの薪、間伐材や木材加工時に出る端材を破砕したチップ、
おがくずや端材を粉砕して圧縮成型した固形燃料のペレット、
おがくずを棒状に圧縮成型したオガライト、
木材を炭窯の中で蒸し焼きにした木炭など。

特に、昔から現代に至るまで活躍しているのが木炭
木炭は、炭化した際にたくさんの孔という穴があく。
その孔に湿気や汚れ、悪臭成分などを吸着する働きがある。
最近では、農業用土壌改良材や化学物質を吸着する建築資材としても注目。

また、焼き鳥などの焼き物を炭火で焼くとおいしい。
炭火は、ガスと違い燃焼しても水分が出ない。
赤外線による遠火の強火が食材に行き渡り、
表面はからりと、中までじっくりと焼くことができる。

もうひとつ、炭を必要としている日本の文化が、茶道である。
現代の茶の湯でも、湯を沸かす燃料として炭は欠かせない。
茶道の普及により、炭の消費量が増え、
より優れた炭をつくるための研究と技術がのびていった。
しかし、これら一部の高級品以外は、林業、炭産業の衰退後、
そのほとんどを中国からの輸入に。

2004年、中国政府は森林保護政策として中国産の木炭を全面輸出禁止。
関係者は慌てたが、これは国産の薪炭に目を向けるきっかけに。
国内の薪炭を取り戻すことで、森林を育てるきっかけを作る活動
「日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン」事務局団体の一つ、
(株)森のエネルギー研究所スタッフの大野さんは、
「今の時代、化石燃料なしでは人々の生活は成り立ちません。
でも、これらはいつかなくなってしまう。
代わりになる資源を準備しておかねばならない。
木質バイオマスはその一つです。
炭焼きは、ほとんど担い手もいないし衰退してますが、
中国の輸出規制により国内で生産していこうという動き。
森林に人の手が入るようになれば、
ペレットや他の木質バイオマス生産にもつながり、
木を燃料としたストーブなどが今よりも手軽に使える」

資源としての木質バイオマスもさることながら、
その木から生まれる火はなんとも魅力的。
おいしい料理や団らんを作り、さらに森林とのつながりも。
火のある暮らしを忘れて久しい現代人に、懐かしい温かさを思い出させる、
そんな木質バイオマスの普及を願っている。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080111org00m040017000c.html

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