2010年10月27日水曜日

発達障害の学生支援(3)教員と心理職 二人三脚

(読売 10月15日)

色鮮やかなビー玉やサイコロなどが盛られた皿をはさみ、
割りばしを手にした学生が、教員と向かい合っている。

「最初はサイコロ、次は貝殻」。
教員の指示で、学生は器用なはしさばきでつまみ上げ、
別の皿へと移す。
「先生よりうまくなったんじゃないか」。
教員が言うと、学生の表情が大きくほころんだ。

大阪産業大学の学生相談室で、目にした光景。
学生相談室長で、カウンセラーの瀬島順一郎教授(63)に、
マンツーマン指導を受けていたのは、アスペルガー症候群と
軽度の学習障害の診断がある工学部4年の渡辺真さん(21)(仮名)。

同大では、発達障害の学生には、教員と学生相談室が連携し、
学習と生活を支援する体制を整えている。
渡辺さんは、苦手な科目の単位がなかなか取れずに悩んだ末、
2年生の時、学生相談室を訪れた。

渡辺さんは、力の出し方をコントロールしたり、場面に合わせて
声の大きさを変えたりすることができなかった。
そこで、上手な会話の仕方など、社会生活や対人関係を営む
技能である「ソーシャルスキル」を、
学生相談室でトレーニングすることになった。
はしの練習も、その一環。

「うまくできたらほめ、ちょっとでもいいところを伸ばす。
自分の行動が認められることで、自信が強まっていく」と瀬島教授。

学習面では、丁寧に補習をするようにした。
学生相談室から連絡を受けた当時の工学部長、
中村康範教授(62)は、「授業後に、積極的に質問するなど
学習意欲は旺盛だが、相手の気持ちを考えずに
しゃべり続けてしまうところがあり、発達障害ではないかとすぐ気づいた。
先輩が、後輩に勉強を教えるピアサポートのシステムの活用を考えた

「学習の支援は教員にしかできないし、学生生活の中で生じる問題は
心理職が専門。
両者が密接に連携しないと、発達障害学生の支援はうまくいかない」
学生生活支援コーディネーターの松岡信子さん(40)。

大学の支援で、大きく成長した渡辺さんが今、直面しているのは、
就労の問題。
コミュニケーションが苦手という自身の特性を、企業に理解してもらうため、
療育手帳を取った。
知的障害を伴わない広汎性発達障害者の就労には、
学習と同様、周囲の理解と支援が欠かせないが、壁は高い。

◆療育手帳

知的障害者に、都道府県・政令市から交付され、
各種福祉サービスが受けられる。
手帳取得により、一定割合の障害者雇用を義務づけられた企業に
採用されやすくなるというメリット。
精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳があるが、
発達障害に特化した手帳を求める声もある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101015-OYT8T00200.htm

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