2010年10月26日火曜日

発達障害の学生支援(2)「共育」で理解深める

(読売 10月14日)

授業が半ばを過ぎたころ、四重に重ねた半透明のシートが配られた。
「弱視の見え方や心理を考えてみて」。
講師の言葉にうなずきながら、学生たちはシートを目の前にかざし、
必死にテキストの文字を読もうとする。

東北公益文科大学で、「インクルージョン社会論」の授業。
15人の学生が、視覚障害者の移動介助や、点字の名刺作りなどを体験。

「指で点字が読めるのを、『すごい!』と言う人がいるけれども、
視覚障害者にとっては平仮名を読むのと同じこと。
そこが分からないと、すべての人々が排除されることなく、
幸せに生きられるインクルージョン社会は実現しない」。
自らも視覚に障害がある講師が訴えると、
学生たちの表情がぐっと引き締まった。

「インクルージョン社会をめざした大学づくり」を掲げた同大の取り組みは、
2007年度の学生支援GPに選定。
発達障害など、特別なニーズを持つ学生と共に学び成長していく
「共育」に力を入れ、授業はその一環。

学生たちは半年間かけて、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、
発達障害と精神障害について理解を深め、その支援方法について学ぶ。

「特別なニーズを持つ学生が、当たり前に過ごせるキャンパスを整備し、
そうした環境で育った学生を社会へと送り出す。
市民向けの公開講座も開き、インクルージョン社会への理解と活動を
促している」
学生共育支援室長の伊藤眞知子教授(57)。

発達障害学生への支援では、板書や資料を使って、
より丁寧に説明するようにするなど、
授業のユニバーサルデザイン化を進めている。
言葉で話すだけでは理解が難しい、という障害の特性に配慮。

この結果、発達障害のある学生だけでなく、
障害のない学生からも、「分かりやすい授業になった」と好評。

支援を的確に判断するため、サポートの必要度を5段階に分類した
「支援スケール」を開発、用いているのも同大の特徴。
手取り足取りの支援では、本人の力がつかず、
自立へとつながらない
副室長の田中和代さん(59)が、苦い経験を振り返る。

「能力がないのに卒業させてしまうのは、高等教育機関として違う」
と伊藤教授。
支援と学位授与方針との間で揺れながら、
「客観的合理性のある配慮」を探る同大の模索が続く。

◆学生支援GP

正式名称は、「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」。
文部科学省の事業で、学生の支援に立った独自の工夫や努力による
優れた取り組み(Good Practice)を、4年間財政支援。
大学の発達障害学生支援では、東北公益文科大のほか、
富山大、信州大、プール学院大が選定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101014-OYT8T00199.htm

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