2010年10月28日木曜日

発達障害の学生支援(4)入学前に調査、早期発見

(読売 10月16日)

自己評価を引き出す質問に、「障害者、きもいと言われます」と
記されている。
書かれている文字も、大学生にしてはあまりにも稚拙で、
行からはみ出しそうだ。

聖学院大学(上尾市)が、入学前準備講座で行っているアンケート調査。
同大総合研究所助教で、学生相談室室長補佐の竹渕香織さん(37)は、
「発達障害の疑いあり」と目を光らせた。

発達障害の学生には、早期発見と早期支援が欠かせないが、
自分自身では障害に気づいていない場合が多い。
同大は、入学後の学生生活ガイダンスで、全学生を対象に、
不安傾向などが分かるUPIテストを実施。
合宿形式の新入生オリエンテーションでも、
学生相談室のカウンセラーらが気になる学生をチェック。

入学前準備講座でのアンケート調査は、2006年から導入。
2~3月にかけて行う準備講座で実施、
より早期の発見を目指そうというもので、
学生相談室とラーニングセンターが開発。

自己評価を引き出す設問では、
「私はよく人から」という書き出しだけ示し、
その後に思いつくことを自由に書かせる。
「当てはまるものに丸をつけるUPIテストと違い、
友人関係などについて文章を書いてもらうことで、
発達障害の発見につながる」と竹渕さん。

同大を3年前に卒業した小林哲郎さん(26)(仮名)は、
オープンキャンパスに訪れた時から、教職員の目にとまっていた。
入学後、病院で検査を受けて高機能自閉症と診断、
親も交えて学生生活の送り方を話し合った。

この結果、カウンセラーの個人面談、教員による学習面での
配慮だけでなく、所属する音楽サークルの部員によるサポートを、
支援の3本柱の一つとすることに。

相談室から、小林さんの障害について知らされた音楽サークルの
部員たちは、小林さんがトラブルを起こす度、竹渕さんを訪ね、
支援の仕方を相談。
そんな部員の気持ちに応えるように、小林さんも相手と
視線を合わせられるようになっていった。

「音楽を作り上げていく過程で、自分も役割を担っているという
達成感が自信となった。
教職員やカウンセラーとは違う同級生、先輩・後輩との人間関係が
精神的な安定を生み、自分にできないことを
受け入れられるようになった」と竹渕さん。

早期に発見することで、仲間とのふれあいが、
発達障害学生の成長につながった。
早期発見の体制が整った同大では、
今度は、学生支援グループの組織化を目指している。

◆UPIテスト

1960年代、全国大学保健管理協会の学生相談カウンセラーと
精神科医が中心になって作成した学生向けの心理テスト。
正式名称は「University Personality Inventory」。
60の設問で構成、特に心身症・神経症の早期発見に効果がある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101016-OYT8T00216.htm

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