2008年11月8日土曜日

マッサージが進行癌患者の疼痛を緩和し、気分を改善する可能性

(Medscape 9月24日)

マッサージが進行癌患者の疼痛と気分を即時的に改善する可能性を示す
多施設共同ランダム化試験の結果が、
『Annals of Internal Medicine』9月16日号に報告。

コロラド大学デンバー校医学部のJean S. Kutnerらは、
「様々な質の小規模試験において、マッサージ療法が疼痛や他の症状を
緩和する可能性が示唆されている」

「進行癌に伴う疼痛は、身体的・精神的苦痛の原因となり、
患者の機能的能力とQOLを低下させる。
マッサージは、セラピストによる介入(存在感、コミュニケーション、
治療効果を得たいという欲求)、リラクゼーション反応の誘発、
血液・リンパ循環の亢進、鎮痛作用の増強、炎症と浮腫の低減、
人の手による筋けいれんの解放、内因性エンドルフィンの放出増加、
疼痛シグナルを無効にする競合的な感覚刺激を通じ、
苦痛のサイクルを遮断する可能性がある」。

本研究の目的は、マッサージが進行癌患者の疼痛と苦痛症状を低減し、
QOLを改善する効果について評価すること。
地域集団を対象としたPalliative Care Research Networkを通じ、
中等度、重度の疼痛を伴う進行癌の成人患者380例を
マッサージ群(30分間のマッサージを6回を行う)、対照群(身体に簡単に触れる)に
無作為に割り付け、2週間の試験を実施。

主要評価項目は、Memorial Pain Assessment Cardを用い、
0-10ポイントの尺度でスコア化した疼痛の即時的変化と、
Brief Pain Inventoryを用い0-10ポイントでスコア化した疼痛の持続的変化。
副次的評価項目は、Memorial Pain Assessment Cardで
測定した気分の即時的変化、60秒間の心拍数・呼吸数、
McGill Quality of Life Questionnaire(0-10ポイント)で測定した
QOLの持続的変化、Memorial Symptom Assessment Scale(0-4ポイント)で
測定した不快な症状、鎮痛薬の使用(モルヒネ非経口製剤に換算した用量[mg/日])。

即時的効果に関する項目は、各治療セッションの直前と直後に測定、
持続的効果に関する項目はベースライン時と3週間にわたり毎週測定。
治療を受けなかった参加者は82例、37例はマッサージ群、45例は対照群。

両群において、疼痛(マッサージ群:-1.87ポイント、対照群:-0.97ポイント)、
気分(マッサージ群:1.58ポイント、対照群:0.97ポイント)の即時改善が認められた。
対照群に比べ、マッサージ群の方が疼痛および気分の即時的改善が顕著
(平均差はそれぞれ0.90ポイントと0.61ポイント)。

持続的な疼痛(Brief Pain Inventory平均的な疼痛:0.07ポイント、
Brief Pain Inventory最悪の疼痛:-0.14ポイント)、
QOL(McGill Quality of Life Questionnaire:0.08ポイント)、
不快な症状(Memorial Symptom Assessment Scale不快指数:-0.002ポイント)、
鎮痛薬の使用(モルヒネ非経口製剤に換算した用量:-0.10 mg/日)、
群間に有意な平均差は認められなかった。

本研究の限界として、即時効果を測定したセラピストが盲検化されず、
報告バイアスと有用性の過大評価が生じた可能性があること、
あらゆる進行癌患者に本結果を一般化できる確実性がないこと、
通常ケアの対照群がなく、身体への簡単な接触とマッサージ療法の
有用性の差について、結論が出せないこと。

マッサージは、進行癌患者の疼痛と気分を即時的に改善する可能性がある。
持続的な効果がないことと、両群で改善がみられたことから、
患者への気配りと簡単な身体への接触という手法が、
本患者集団に有用である可能性も検討すべきである」。

Ann Intern Med. 2008;149:369-379.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=82600

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