(毎日 10月28日)
図画工作が、子供の読解力や表現力、社会性を育てる。
東京都江戸川区立篠崎小学校のホームページには、
児童の作品がふんだんに紹介。
ネットで公表することで、他校やデザイン会社、芸術家などから、
感想や反響が寄せられるようになった。
仕掛け人は、図工の専科教員、川島真紀雄教諭(58)。
「社会に受け入れられる作品を意識することは、社会を学ぶことにもつながる。
子供が社会と結びついた表現活動ができるのも、美術分野ならではの成果」
川島教諭は、パソコンを使って図工の授業を充実させてきた。
6年生のアニメーション作りが佳境を迎えていた。
子供たちは、自分で物語を考え、コマ割りをしたスケッチを元に、
パソコンで自由に絵を描いていく。
マイクで、声を吹き込むこともできる。
「必ず音楽か声を入れて。音を入れると、漫画がアニメや映画になるんだ。
友達に声優を頼んでもいいよ」
子供たちは、数分の小作品に恋愛、SF、メルヘン、戦争、環境問題など、
自由な発想で描いていく。
早い時間に完成した作品は、授業中、教室のスクリーンで発表。
「音がユニークだ」、「キャラクターが面白い」。教室に笑いが響いた。
図工の授業は、ただ創作させるのではなく、
授業の狙いを明確にすることが大事だと川島教諭は考えている。
同小では、6年生が抽象画を勉強する。
最初は、ピカソなどを題材に歴史を学び、抽象画の色彩や形、バランスなどの
法則性を理解してから、パステルクレヨンやパソコンを使った創作に入る。
「創作活動は一見、自由なようだが、例えば版画は白黒しか使えない。
制約の中でどう自己表現するかを工夫し考えることも、
子供が自主的に課題を解決しようとする力を育てることになる」
図工は、2002年実施の学習指導要領で、小学校高学年の
年間標準授業時数が70時間から50時間に削減。
危機感を覚えた教員らが、06年に結成した
「がんばれ!図工の時間!!フォーラム」の委員長、
藤幡正樹・東京芸術大学教授は、「小学校の図工は美術教育の入り口ではない。
正解がなく、言葉や数字を使わず、素材に直接触れて体験する表現活動は、
すべての授業や学力の基礎になる教科だ」
図工の専科教員を置く自治体は少なく、すべての教科を担当する
小学校の教員が図工に力を入れるのは容易ではない。
「図工は、知識重視の教育の中で、効率が悪い教科かも知れないが、
図工の創作体験を国語の授業で作文にするなど、
先生が工夫をすれば教科横断的な指導ができる」(藤幡教授)
篠崎小の川島教諭の場合、俳句にパソコンで絵をつける「俳画」にも取り組む。
教科横断型指導の好例。
豊かな表現力と思考力は、国語や算数だけで得られるものではない。
◆図画工作の専科教員
2004年の文部科学省学校教員統計調査によると、
授業を受け持つ小学校教員で、図工を専門に教えている教員は、
全体の0.5%(約2000人)。
同省教職員課の06年度の集計によると、小学校で図工を専門に教えている
教員のうち、中学や高校の美術の教員免許を持っているのは全国で1021人。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081028-OYT8T00179.htm
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