2010年4月27日火曜日

「医療は連携」実践教育

(2010年4月20日 読売新聞)

医療の高度化に伴い、様々な専門職が連携して診療にあたる
「チーム医療」の必要性が高まっている。
医学生のうちから、チームで医療を行う大切さや技術を学ぶ
取り組みを見た。

「ヤバいよ……。どんどん患者が重症化してる!」
「看護師役の俺たちじゃ診察できないし、医師役はどこに行ったんだ?」
日本医科大の大教室。
感染防御用のマスクやガウンに身を包んだ医学生二十数人が
走り回っていた。

この日行われたのは、学生が医師役1人、看護師役2人、
看護助手役1人の計4人でチームを作り、病棟を担当する体験型授業。
強毒性の新型インフルエンザが、世界的に大流行する
「パンデミック」が起きたと想定。
同大医療管理学教室の秋山健一助教を中心に、
米 ピッツバーグ大で感染症危機管理教育として導入された
演習をもとに、日本の事情に合ったプログラムを開発、
今年初めて実施。

「感染症への対応という、医療の基本を身につけるとともに、
チーム医療の大切さを理解してもらうのが狙い。
体験型授業では、学生が身をもってその重要性を学ぶことができる」

授業の仕組みはこうだ。
大教室を病院に見立て、「病棟」、「集中治療室」、
「ナースステー ション」、「霊安室」などのスペースに区切る。
病棟スペースには、幾つもイスを並べ、
その上に人の上半身を描いた厚紙を置く。
胸ポケットの部分に、教員が「医師の診察」、「食事」など
患者の状態や必要な処置を記した札を入れていく。
学生は、患者と同じ札をナースステーションに取りに行き、
胸にある札に重ねると、処置が終了。
すると、新たな札が入れられて、患者の状態は刻々と変化していく。

この日は、「点滴」が足りなくなったり、「集中治療室」が満床と、
学生は大苦戦。
死亡診断など、医師にしかできない処置が多いため、
他職種の手が空いていても対応できない患者がたまり、
重症化させる例が目立った。

15分間の演習後、各チームが対策を検討。
「医師は、医師にしかできないことに専念する」、
「『嘔吐』など、看護助手にできる札が出たら声掛けをする」など、
役割分担やコミュニケーションに工夫が図られ、
後半はスムーズに対応できるチームが増えた。
授業後のアンケート(2、3年生約200人)でも、
「他職種とのチームワークの重要性を実感した」と回答する
学生が最も多かった。

チーム医療の教育に取り組む動きは、他にもある。
文部科学省、「がんプロフェッショナル養成プラン」事業では、
全国94の医療系大学が参加。
がんの専門医や専門看護師などの養成を目指し、
大学院で、多職種連携の実践型教育を始めている。

「日本ではスローガンばかりで、教育手法の開発が不十分」、
各国の医学教育に詳しい長谷川敏彦・同大教授は指摘。
米国ではここ数年、膨大な知識を詰め込むだけでは
実地医療に役立たないとして、学生が主体的に参加し、
考えられる模擬訓練型の教育プログラムの開発・導入が盛ん。

長谷川教授は、「チーム医療を推進するには、
多職種の医療スタッフが連携し、患者と一緒に問題を考え、
解決していくという医療の姿を明確にする必要もある

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119261/

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