2010年4月30日金曜日

親と向き合う・2(3)「苦情は宝」若手育てる

(読売 4月21日)

始業前の午前8時過ぎ、東京都東村山市立大岱小学校
職員室内に、教員たちの声が響きわたる。
「集金袋は教卓に置かない」、
「集金は、その場で中を確認する」――。

毎週水曜日に開く、若手向けの研修会。
教職6年目までの教員が朝の5分間、仕事の基本を点検。
春先は、集金の機会が多く、回収のトラブルを防ぐことを確認。

この研修に活用するのが、同校がまとめたOJT(職場内訓練)ノート。
作成を指揮した西留安雄校長(60)は、OJTのアルファベットの
頭文字から、「大岱常識手帳」と名付けた。
教員が身につけるべき常識について、「社会人・学校人」、「学級経営」など
11章に分けて、全736項目を掲載。

同校は、「苦情は宝」を合言葉に教員を育てる。
2月に掲載したシリーズ「親と向き合う」では、
保護者からの指摘を列記し、職員室に張り出す実践を紹介。
手帳には、これらの内容も盛り込んだ。

例えば、運動会。
「アンカーには、ゼッケン・たすきを掛けさせる」とある。
リレーの最終走者が目印をつけていないと、観戦する保護者や
地域住民の多くにとって、勝敗の結果が分かりづらい。
そんな苦情がベースにある。

「手帳にある項目の半分ぐらいは、保護者から指摘されたこと。
意外と、学校が気づいていないことが多く、それらを視覚化し、
共有するのが大事」と西留校長。

校長自身、過去に苦い経験がある。
別の学校で校長だった10年ほど前、保護者から苦情が。
あまり言い分を聞かず、部下の教員を守ろうとする気持ちから、
「学校としてはこうですよ」と答えていた。
やがて気づいた。
「理にかなった指摘もあるかもしれないのに、学校優位の考えで、
保護者に責任を押しつけていたのでは」

4月に教職に就いた永井佑樹教諭(22)は、
「常識手帳を活用し、社会人のマナーや謙虚さを身につけていきたい」
西留校長は、「過去の失敗を、若い教員にはさせたくない。
誰からも信頼される、プロフェッショナルな教師を育てていきます」
手帳に載せる項目は、必要に応じて追加する。

「学校の常識は、世間の非常識」と言われる。
その言葉を打ち消そうと、現場が一丸となって変わろうとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100421-OYT8T00347.htm

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