2010年4月26日月曜日

トランス脂肪酸:消費者庁が含有量表示へ指針

(2010年4月19日 毎日新聞社)

マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸が、
心臓疾患などのリスク要因として注目。
消費者庁が、その情報開示のガイドラインづくりに乗り出した。
たんぱく質、炭水化物など、基本的な栄養成分の表示さえ
義務化されていない。
その段階でなぜ、トランス脂肪酸だけが優先されるのか?
「まずは栄養成分の表示を」という声。

トランス脂肪酸は、マーガリンのほか、菓子パン、クッキー、ドーナツ、
ケーキ類などに多く含まれる。
サクサクした食感が出るメリット。
欧米では、とり過ぎると悪玉コレステロールが増え、動脈硬化など
心臓疾患のリスクが高くなるとの報告。
03年、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の
合同専門家会議が示した目安。
「1日の総エネルギー摂取量に占めるトランス脂肪酸の比率を、1%未満に」

日本人の摂取量はどの程度か?
食品安全委員会によると、1日平均摂取量は国民健康・栄養調査の
食品摂取量から推定0・7g、総エネルギーに占める比率は0・3%。
米国では、1日平均摂取量が5・8g、同比率は2・65%、
注意目安の1%未満を超えている。
EUでも、日本人より摂取量は多い。

福島瑞穂消費者担当相は今夏をめどに、食品中に含まれる
トランス脂肪酸の含有量を、企業に自主開示させる
ガイドラインづくりをする方針。
消費者団体や専門家から、疑問の声が出始めた。

日本生活協同組合連合会(約500生協加盟)の
鬼武一夫・安全政策推進室長は、「トランス脂肪酸表示は、
生協連の中でも優先度は高くない。
欧米では当たり前の栄養成分表示こそが重要

心臓疾患のリスクを高める要因は、バターや肉類などに多い
飽和脂肪酸やコレステロール、塩分、アルコールの取り過ぎ、
喫煙、高血圧、肥満など。
トランス脂肪酸は一要因に過ぎない。
日本では脂肪、炭水化物、たんぱく質、食塩、食物繊維など、
基本的な栄養成分の表示すら義務化されていない。

畝山智香子・国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第3室長は、
消費者庁主催の公聴会で、「日本では、トランス脂肪酸の摂取が
心臓疾患の死亡を増やしているデータはない。
塩分の取り過ぎや高血圧に気をつけることの方が重要

トランス脂肪酸の含有量だけを開示させると、
別の健康リスクが生じる可能性が。
パーム油が原料のショートニングを使えば、トランス脂肪酸は減る。
飽和脂肪酸が増えてしまい、健康へのリスクは高くなる。

川端輝江・女子栄養大教授は、「日本人は、飽和脂肪酸の
取り過ぎの方が問題」と指摘、「摂取量の少ないトランス脂肪酸の
含有量を開示しても、健康増進にはほとんど寄与しない」

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の
蒲生恵美・食生活研究会代表は、「トランス脂肪酸だけを悪者にすると、
『これさえ控えれば大丈夫』と消費者をミスリードしかねない」と懸念、
「食品の栄養成分を、総合的に判断できるような表示が
優先されるべきだ」
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◇トランス脂肪酸

植物油は常温で液体だが、水素を加えると、
マーガリンのように固体になる。
そのプロセスで生成される。
牛乳やバターなど天然の乳製品にも含まれるが、企業の技術開発で
含有量は減っている。
家庭用マーガリンでは100g当たり平均含有量は1・8g、
4年前に比べ約4分の1(日本マーガリン工業会調べ)。
ミスタードーナツでも、ドーナツ1個あたり約0・2g、
3年前に比べ8割近くも減らしている。
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■主な食品中のトランス脂肪酸含有量 (100gあたりの量。単位g)

食品        平均      最小~ 最大
ショートニング  13.6     1.15~31.2
マーガリン     7.00    0.36~13.5
クリーム類     3.02    0.01~12.5
バター        1.95    1.71~ 2.21
ビスケット類    1.80    0.04~ 7.28
マヨネーズ     1.24    0.49~ 1.65
チーズ        0.83    0.48~ 1.46
ケーキ類      0.71    0.26~ 2.17
菓子パン      0.20    0.15~ 0.34
※クリーム類は、クリームや乳を原料とする加工食品や
コーヒー用のクリーミングパウダーなど

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/19/119182/

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