2010年4月30日金曜日

スポーツ立国 第1部 支援(1)選手環境 世界に見劣り

(読売 4月21日)

日本スポーツ界が、変革を迫られている。
長引く不況の影響で、企業のスポーツ離れが進み、
野球など一部の競技を除き、国際競技力は低迷。
バンクーバー五輪では、メダル争いでライバルの韓国に
大きく水をあけられた。
再び世界で輝くため、民間から国による強化へと進む日本スポーツ界。
その針路を探る。

“韓国ショック”――
バンクーバー五輪で、韓国が14個のメダルを獲得したのに対し、
日本は約3分の1の5個。
国の手厚い支援を受けて躍進したライバルの姿に、
五輪選手団長を務めた橋本聖子は、危機感を口にした。
「このままでは世界で取り残される」

スポーツ大国の支援を見ると、選手への強化費支給と
練習環境の整備、という2本柱が整っている。
日本は、両方とも心細い。
2008年北京五輪陸上男子400メートルリレーで、
銅メダルを獲得した朝原宣治は、
「日本には、一貫したスポーツ政策がない」

学校のクラブ活動の中で走り始めた朝原。
高校で陸上部に入り、大学3年の時に100mの日本新記録。
その後、選手としての自分を支えたのは、国ではなく、企業。
大阪ガスに入社後、5年間のドイツ留学を許された。

外国人指導者の下で競技力を磨いた朝原は、
スポーツが置かれた環境の違いを感じた。
練習拠点のスポーツクラブには、天然芝のグラウンドが広がり、
国や州の資格を持ったプロのコーチやスタッフがそろっていた。
「選手が、簡単に指導者を交代できるのに驚いた」
恵まれているのは、トップ選手だけではない。
「小学生から80歳代のお年寄りまで、
誰もがスポーツを楽しむ環境があった」と訴える。

朝原がトップ選手へと成長する過程で、国の支援は少なかった。
JOC強化指定選手になった時、年間で約200万~300万円を
受け取るぐらい、大学や企業のグラウンドを走り続けるしかなかった。

朝原が引退する約1年前、トップ選手の練習拠点がようやく誕生。
文部科学省が、370億円をかけて整備した、
ナショナルトレーニングセンター(NTC)。
屋根付きのトラックが完備され、栄養士などサポート体制も充実。

橋本は、「利用料がかかるなど、まだまだ使い勝手が悪い」
日本でNTCを使う場合、利用料は競技団体が負担するが、
韓国では代表選手の使用は無料。
1日数千円の手当が支給されるなど、
日本よりも「選手に優しい」環境が整っている。

「スポーツを文化として根付かせたい」との思いから、
橋本は政治家に転身。
以来15年。
その願いは、まだ実現していない。
悔しいのは、16年東京五輪招致の失敗。
東京の基本理念は素晴らしかったが、世論の支持率は56%止まり。
招致失敗の知らせを聞いた瞬間、
「国民の理解が得られなかった」と無念で涙があふれた。

昨年行われた政府の事業仕分けでは、財政難に苦しむ中、
税金を投入してまで五輪のメダルが必要なのか、と問われた。
結局、メダル獲得数が伸び悩むJOCへの補助金は、4%も削減。

国から競技団体に渡される金額をみると、
今年度の国の予算約92兆円のうち、JOCへの補助金は約26億円。
わずか0・003%。
「日本人は、五輪で日本選手の活躍を期待するが、
それを支える環境にはあまりにも無関心」と橋本。
国民の理解が深まった時、スポーツ立国への道が見えてくる。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100421_01.htm

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