(読売 4月21日)
日本スポーツ界が、変革を迫られている。
長引く不況の影響で、企業のスポーツ離れが進み、
野球など一部の競技を除き、国際競技力は低迷。
バンクーバー五輪では、メダル争いでライバルの韓国に
大きく水をあけられた。
再び世界で輝くため、民間から国による強化へと進む日本スポーツ界。
その針路を探る。
“韓国ショック”――
バンクーバー五輪で、韓国が14個のメダルを獲得したのに対し、
日本は約3分の1の5個。
国の手厚い支援を受けて躍進したライバルの姿に、
五輪選手団長を務めた橋本聖子は、危機感を口にした。
「このままでは世界で取り残される」
スポーツ大国の支援を見ると、選手への強化費支給と
練習環境の整備、という2本柱が整っている。
日本は、両方とも心細い。
2008年北京五輪陸上男子400メートルリレーで、
銅メダルを獲得した朝原宣治は、
「日本には、一貫したスポーツ政策がない」
学校のクラブ活動の中で走り始めた朝原。
高校で陸上部に入り、大学3年の時に100mの日本新記録。
その後、選手としての自分を支えたのは、国ではなく、企業。
大阪ガスに入社後、5年間のドイツ留学を許された。
外国人指導者の下で競技力を磨いた朝原は、
スポーツが置かれた環境の違いを感じた。
練習拠点のスポーツクラブには、天然芝のグラウンドが広がり、
国や州の資格を持ったプロのコーチやスタッフがそろっていた。
「選手が、簡単に指導者を交代できるのに驚いた」
恵まれているのは、トップ選手だけではない。
「小学生から80歳代のお年寄りまで、
誰もがスポーツを楽しむ環境があった」と訴える。
朝原がトップ選手へと成長する過程で、国の支援は少なかった。
JOC強化指定選手になった時、年間で約200万~300万円を
受け取るぐらい、大学や企業のグラウンドを走り続けるしかなかった。
朝原が引退する約1年前、トップ選手の練習拠点がようやく誕生。
文部科学省が、370億円をかけて整備した、
ナショナルトレーニングセンター(NTC)。
屋根付きのトラックが完備され、栄養士などサポート体制も充実。
橋本は、「利用料がかかるなど、まだまだ使い勝手が悪い」
日本でNTCを使う場合、利用料は競技団体が負担するが、
韓国では代表選手の使用は無料。
1日数千円の手当が支給されるなど、
日本よりも「選手に優しい」環境が整っている。
「スポーツを文化として根付かせたい」との思いから、
橋本は政治家に転身。
以来15年。
その願いは、まだ実現していない。
悔しいのは、16年東京五輪招致の失敗。
東京の基本理念は素晴らしかったが、世論の支持率は56%止まり。
招致失敗の知らせを聞いた瞬間、
「国民の理解が得られなかった」と無念で涙があふれた。
昨年行われた政府の事業仕分けでは、財政難に苦しむ中、
税金を投入してまで五輪のメダルが必要なのか、と問われた。
結局、メダル獲得数が伸び悩むJOCへの補助金は、4%も削減。
国から競技団体に渡される金額をみると、
今年度の国の予算約92兆円のうち、JOCへの補助金は約26億円。
わずか0・003%。
「日本人は、五輪で日本選手の活躍を期待するが、
それを支える環境にはあまりにも無関心」と橋本。
国民の理解が深まった時、スポーツ立国への道が見えてくる。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100421_01.htm
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