(日経 10月30日)
長時間働いている割に、思うような成果をあげられない——。
こうした状況を、「仕事メタボ」と名づけたのが、
産業能率大学総合研究所の新井幸子プロジェクトリーダー。
どうすれば、仕事メタボから脱却できるか?
大手食品メーカーの営業担当のAさん。
スーパーへの新商品の提案書作成、在庫確保、
ライバルメーカーの動向視察など、仕事が次から次へと舞い込む。
時間内には終わらないため、サービス残業。
Aさんは疲れ切り、成果も出ず、仕事へのやる気も失ってしまった。
仕事メタボから脱する秘訣は、
「生産性の高い仕事の進め方」を実践すること。
4つのポイントの頭文字を並べた言葉、「ECRS(イクルス)」
まず、「E=エリミネイト(排除する)」
すべての仕事をまんべんなくやろうとしたら、
いくら時間があっても足りない。
優先順位の高い仕事に注力し、そうでない仕事は後回し。
ビジネスパーソンにおける「選択と集中」。
仕事の優先順位は、重要度と緊急度で判断。
Aさんの例では、大口顧客であるスーパーが関係していたり、
納期が迫っていたりする仕事を、
重要かつ緊急性が高いと判断、優先的に着手。
ライバルメーカーの動向視察などは、時間ができたときに処理。
2つめのポイントは、「C=コンバイン(結合する)」
一緒にできる仕事を、可能な限り同時に片づけること。
仕事には、共通性の高いものがある。
これらを同時に進めれば、時間短縮が図れる。
Aさんは、在庫確保に、顧客ごとに手配するのではなく、
全体の必要数を計算してから一遍に取り掛かる。
スーパーB社に出した企画書のうち、ほかにも転用できる部分が
あれば、百貨店C社への企画書にも採り入れる。
後回しにできなかったり、ほかと一緒に片づけられない
仕事ばかりでは、どうすればよいか?
ポイントは、「R=リアレンジ(交換する)」
やり方を変えるのも大切だが、ここでは人を替える方が重要。
ライバルメーカーの動向視察は、マーケティングが得意な
同僚のDさんに頼んだり、商品のセールスポイントのアピールの
仕方を商品企画部門のEさんに考えば、Aさんの負担は減る。
自分が得意な分野であれば、人の仕事を引き受ける。
企画書作りに自信があるなら、同僚の代わりに用意してあげる。
こうすれば、職場全体の生産性向上にもなる。
最後のポイントが、「S=シンプリファイ(単純化する)」
定型化された仕事のマニュアルを作ったり、
資料のひな型(フォーマット)を用意。
その都度考えず仕事を進められ、時間や労力を節約できる。
在庫確保なら、必要量をはじき出すための計算式を作る。
企画書でも、プレゼンテーションの流れに沿ったひな型があれば、
ムダな労力をかけずに済む。
「ECRS」を実践するには、流されるまま仕事をしていてはダメ。
事前に段取りを決めておくことが大切。
段取りの手順は、
(1)ゴールを明確にする
(2)必要な作業を洗い出す
(3)作業工程図を描く——。
ゴールを明確にするには、
「3W1H(何のために、何を、いつまでに、どのように)」で整理。
ゴール達成への作業を過不足なく洗い出し、
どう進めるのかを図にまとめる。
どの仕事を排除(後回し)すればよいかがわかる。
統合した方がよい、誰かに代わった方がよい仕事も浮かび上がる。
何回か繰り返さなければならない仕事があれば、単純化しておく。
こうした工夫が、生産性向上に役に立つ。
仕事の進め方をコントロールし、効率をあげる手法は数多くある。
コントロールの手法を身につけただけでは不十分。
仕事の進め方をモニタリング(監視)し、どこに問題点があるか、
はっきりさせることが必要。
モニタリングには、どのような時間で、
何の仕事を片付けたのかを、数週間にわたって記録。
自分の記録を分析すると、「こんな無駄なことをやっていたのか」、
「こんなことに多くの時間と労力をかけていたのか」と、問題点に気づく。
気づいたことを改善ポイントにし、様々なコントロール手法を駆使する。
モニタリングとコントロールが車の両輪のように機能すると、
仕事メタボから脱出できる。
◆あらい・さちこ
2000年産業能率大学に入職、社会人教育事業に携わる。
人的資源管理や教育体系構築などの調査・研究、
多くの企業や公共団体にコンサルティング。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz091106.html
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