2009年11月21日土曜日

廃虚から立ち上がる米国

(日経 2009-11-09)

先月、米国発で注目すべきニュースが2つ。
1つは、ゼネラル・モーターズ(GM)が閉鎖した工場を、
自動車ベンチャーが買い取り、プラグインハイブリッド車を生産。
もう1つは、スマートグリッド(次世代送電網)の構築に、
米政府が34億ドル(3100億円)を拠出。
米国は、いよいよ廃墟から立ち上がろうとしている。

GMから工場を買い取るのは、フィスカー(Fisker)という
自動車ベンチャー。
同社は、2007年に創業者のヘンリック・フィスカー氏が、
クライナー・パーキンスやカタール政府系投資ファンドの資金で設立、
テスラ、アプテラ、コダなどと並ぶ、
米国で最も注目される自動車ベンチャーの1つ。

電気自動車(EV)やハイブリッド車のベンチャー企業といえば、
ショールームの裏庭にしつらえた工房で組み立てたり、
車体生産を自動車メーカーに丸ごと委託したりと、
零細経営が目立っていた。
フィスカーが画期的なのは、GMの旧工場を活用すること。
ベンチャーが、いよいよ量産メーカーになろうとしている。

同社をバックアップしているのは、オバマ政権。
工場売却は、政権が直接働きかけ、税制面での優遇措置を提供。
米政権は、EVやハイブリッド車などエコカー購入への
税額控除などを検討、フィスカーが12年に発売する新型車は
4万ドル弱、現行スポーツ車の価格の半分程度。

電気自動車では、高額なスポーツカーを手がけてきたテスラが、
11年にファミリーカー「モデルS」を立ち上げる。
同社の場合も、量産モデルの実用化は政府のインセンティブが後押し、
アプテラ、コダなどが同様の計画を打ち出すことが決まっている。

雇用とグリーン産業育成を掲げるオバマ政権。
自動車と両輪をなしている目玉が、スマートグリッド。
オバマ大統領が拠出を決めた34億ドルは、
電力網の整備に向けられる公共投資の規模で過去最大。
インフラ網の整備ほか、「スマートメーター」の普及を通じて、
数十万~数百万人規模の雇用を生み出す効果がある。

こちらも、民間は「大歓迎」(ゼネラル・エレクトリックのイメルト会長)、
官民蜜月関係ができあがっている。
オバマ演説の直前、GEとワールプールが中心になり、
スマートグリッドが温室効果ガスの削減に貢献する
可能性があることをアピールする業界団体を立ち上げた。
「スマート・グリーン・グリッド・イニシアティブ(SGGI)」。

米メディアでも脚光を浴び始めた同団体への加盟企業・団体は20、
グーグル、スマートメーターの大手イトロンなど。
12月、コペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国
会議(COP15)の前後では、SGGIがさまざまなイベントを催し、
米政府と一体で米国製スマートグリッド技術を世界に売り込む。

少しずつ見えてきた米国の環境技術戦略と主役に座る企業群。
日本はこうした動きをどうとらえ、世界で戦っていくか。
1つ気になったのは、SGGIの20社に韓国・LG電子が。
米国とともに、隣国の動向にも目が向いてしまう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091105.html

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