(2009年11月11日 共同通信社)
所得格差の拡大につれ、人が早く死ぬ危険が高まり、
格差が原因で1年間に増える死者数(過剰死亡)は、
日本で約2万3千人、日米など15カ国で154万人。
推定結果を、山梨大医学部の近藤尚己助教らと
米ハーバード大などの研究グループが英医師会誌に発表。
所得格差が大きくなると、社会的ストレスが強まって
健康に影響することは知られていたが、
世界中で多くの人命を奪っていることが示されたのは初めて。
近藤さんは、「健康対策の面からも、格差問題を考えるべき」。
グループは、多数の論文の内容を分析して結論を導く「メタ分析」で、
所得格差と健康に関する世界中の論文のうち、
信頼性の高い31の論文を解析。
約6千万人が調査対象。
格差の指標となるジニ係数が0・3を超えて格差が大きくなると、
個人の所得水準や年齢、性別にかかわらず、
健康への悪影響が出始めていた。
ジニ係数が、0・3から0・05上がるごとに、
早期死亡の危険が9%ずつ増加する傾向。
経済協力開発機構(OECD)加盟の30カ国のうち、
ジニ係数が0・3以上の国は日本を含め15カ国。
15カ国のジニ係数から、所得格差による各国の過剰死亡を
推定すると、米国が88万人と最多で、
ジニ係数が高いメキシコやトルコが続いた。
日本は、約2万3千人と4位で英国のほぼ2倍。
研究グループの山縣然太朗・山梨大教授は、
「悪影響を受けるのは、貧困者だけではない。
格差社会で余分のストレスを受けて、すべての人々に
生活習慣病やうつ病などのリスクが高まるのではないか」
◆橋本英樹・東京大大学院医学系研究科教授(臨床疫学)の話
多くの論文の結果を、メタ分析できれいにまとめていると評価。
ジニ係数が0・3以上で、健康影響や死亡が増加する傾向も
多分正しい。
政策に訴える力はあるが、医療や社会経済制度などの違いも
反映するので、ジニ係数だけから所得格差による
過剰死亡数まで出せるか、議論は必要。
▽ジニ係数
所得格差の指標。
完全に平等なら「0」、1人がすべての富を独占すると「1」。
0・2~0・3が目安として、「通常の配分型」。
0・3以上で「格差が広く意識されだす」、
健康への悪影響が出始めるという今回の結果と符合。
総務省の全国消費実態調査によると、
日本は長く0・3以下、2002年に0・308、04年に0・314に増え、
OECD加盟国の平均を超えた。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/11/110967/
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