2010年2月4日木曜日

太陽電池シェア争い オムロンが鍵

(日経 2010-01-25)

家庭用の太陽光発電市場が熱い。
政府の手厚い補助策によって、国内需要が拡大し、
シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機の国内大手4社が
寡占してきた市場に、昭和シェル石油やホンダの子会社、
中国サンテックパワーなど海外勢が続々と参入、
シェアを食い合っている。

安値を武器に参入する海外勢の勢いはすさまじく、
2008年度の出荷実績ほぼゼロから、
09年度は上半期のシェアは12%に。
攻勢をかける海外勢が国内メーカーのシェアを奪い続けるか——。

群雄割拠の大競争を左右するカギを、
実は意外な企業が握っている。
基幹部品「パワコン」の輸入事業者への供給を、
一手に引き受けるオムロンだ。

オムロンはパワコンを増産するのか、しないのか、
するならいつか?
その決断が、競争環境を大きく変えることになる。

家庭に太陽光発電システムを導入すると、
屋根に乗せる太陽光発電パネルだけでなく、
屋内に弁当箱のような長方形の機器を設置。
この地味な機器が、「パワコン(パワーコンディショナー)

太陽光発電パネルが日光を浴びて作る電気は、
コンセントから流れる電気と性質が異なり、そのままでは使えない。
パワコンは、電気の性質を変更し、家庭で使える電気にして供給。
安全性の維持など、様々な役割を果たし、
太陽光発電システムに欠かすことのできない部材。

パワコンに求められる品質は、各国によって異なる。
国内で使われるパワコンの品質は、
電気安全環境研究所(JET)が厳しく管理、JETの認証を
得ていることを示すラベルがはられていない製品は使えない。

日本の水準は非常に厳しく、検査項目は30にも及ぶ。
いくつかの海外メーカーが「受験」に臨んだが、
JET認証の壁に阻まれ、国内販売できなかったケースも。
技術が世界標準化した太陽光発電パネルは、
多くの海外製品が国内市場に流入、
海外パワコンの国内販売への壁は高い。

割安な海外製太陽光発電パネルを輸入しても、
パワコンがなければ商品にはならない。
輸入事業者は、国内パワコンメーカーに供給を依頼、
その選択肢は限られている。

国内のパワコンメーカー4社のうち、シャープ、三洋電機、
三菱電機は自らパネルも製造し、国内販売。
各社とも国内販売を伸ばし、パワコンを他社に供給する余裕は乏しい。
余裕があったとしても、ライバルとなるニューカマーに
わざわざ塩を送るような選択はしない。

自らパネルを製造・販売していない唯一の
パワコン大手メーカーであるオムロンに注文が集中。
オムロンは、京セラ向けのパワコンを中心に生産、
輸入パネル向けにも積極的にパワコンを供給。

熊本県内の子会社の工場では、昨夏までにほかの製品と
共用だった生産ラインを専用にし、生産人員も2割増強。
昨夏、今年度の出荷量見込みは前年度比倍増の10万台。
「この好調さは3年くらい続くのでは」というほど、
生産増強をしたばかりなのに、さらに新しいラインの設置を
視野に入れていた。

昨年11月、家庭向け太陽光発電の補助が拡大された前後、
多くの事業者が輸入太陽光発電の販売を始めた。
多くの事業者が一気に参入、オムロン製パワコンは
急速に不足し始めた。

「オムロンからのパワコン供給数が制限され、
思ったように販売数量を増やせない」、
「大切な立ち上げ時期、パワコンの供給が間に合わないのは痛い、
春先に増産するとのうわさに期待するしかない」
商機ととらえ、こぞって参入した輸入事業者は、
ボトルネックとなったパワコンの調達に四苦八苦。

供給先の声に応え、オムロンはいつ増産に踏み切るのか——。
割安な輸入太陽光発電パネルが、オムロン製パワコンの
潤沢な供給を受けて市場を席巻すれば、
国内勢は大幅にシェアを食われかねない。
市場の構造が大きく変容する可能性があるだけに、
オムロンのパワコン増産とそのタイミングに、高い関心。

輸入事業者は、オムロン頼みのビジネスではあまりにも不安定。
別の道を探り始める動きも始まっている。
シャープから受託してパワコンを生産している田淵電子工業
現在、月5000台程度をシャープ向けに製造、
最近、「パワコンを分けてくれないか、との連絡が多い」。
生産人員を増やし、ラインの稼働時間を延長すれば増産は可能、
「(シャープ以外の)他社向けにパワコンを供給することもあるかも」

海外からの輸入を目指す動きもある。
1月6日、JETのパワコン認証を韓国LS産電が取得。
海外製パワコンが認証を得たのは、2社目。
LS産電が作る太陽光発電パネルを販売するサニックスは、
1月中にオムロン製パワコンをLS産電製パワコンに切り替え、
サニックスブランドを付けて販売。

多くの海外製品を跳ね返してきたJETの壁だが、
「LS産電は、かなり研究を重ねた跡がうかがえ、
質の高い製品にしてきた」(JET幹部)。
試験期間わずか2カ月のスピード合格。
海外製パワコンは、もう1社が試験中。
別の2社の製品の試験も始まる直前のほか、
2~3社が認証取得を目指して動いている。
長期的には、海外製パワコンも確実に国内市場に広がりそう。

成長市場と期待される太陽光発電市場。
日を浴びて目に付く発電パネルの商品性だけでなく、
日陰に置かれるパワコンの調達力が、
シェア拡大のポイントになりつつある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan100122.html

0 件のコメント: