(読売 1月26日)
専門のコースを設け、和文化を広く教える学校がある。
広々とした実習室。
作業台には、江戸後期から続くガラス工芸品、
「江戸切り子」専用の研磨機が据えられている。
男女9人の生徒が作業台に向かい、高速で回転する研磨機に
直径約16cmの平皿をあて、模様を彫っていく。
東京都立大江戸高校は、2004年、不登校の経験者や
他校の中退者など受け入れる都のチャレンジスクールとして、
江東区に開校。
午前、午後、夜間の3部がある定時制で、
下町文化が残る地域の特色を生かそうと、当初から
江戸の文化を中心に学ぶ「伝統・文化」のコースを設けている。
前・後期制をとっており、江戸切り子は、
選択科目「伝統工芸実践」の後期授業で学ぶ。
前期は、べっ甲細工を体験。
選択科目は、木彫や押し絵羽子板などの「伝統工芸入門」、
和太鼓などの「邦楽」、「陶芸」、「茶道・華道」など、
各科目とも2コマ連続で実践的な授業をしている。
伝統工芸関連の授業では、学校の委託を受けた
プロの職人が講師を務める。
江東区の無形文化財に指定される小林淑郎さん(59)は、
同校で江戸切り子を教えて4年目。
授業には手応えを感じている。
「作業を始めると、子どもたちは1時間以上でも無心で続ける。
素直で、教えがいがある」
伝統工芸を目当てに、入学する生徒も。
テレビの特集を見て、職人の姿や作品の美しさにひかれたという
3年生の女子(18)は、「本物の職人さんに教わるなんて、
普通は経験できない。この学校に来て、得した気分」
東京都教育委員会は、「国際社会で生きる上で、
日本の伝統と文化を理解することは大切」、
05年、アニメなど現代文化を含めた
「日本の伝統・文化理解教育」の普及を推進。
独自教科として開設する学校に対し、講師への謝礼を支援、
年間のカリキュラムや教材集などを作成し、導入の便宜を図っている。
今年度、高校や特別支援学校など都立46校が、
「伝統・文化」を開設。
将棋や紙すき、日本舞踊、津軽三味線など、様々な実践。
定時制課程での開設は、大江戸高校も含めて10校に上る。
同校の岡昇校長(57)によれば、伝統・文化の授業には、
生徒の好奇心や挑戦意欲を刺激する効果がある。
「生活との関連性を説明しているので、
小中で学びに興味を持てなかった子も、関心を持ちやすい。
伝統工芸の授業では、ものをつくることで達成感が味わえ、
前向きな気持ちがわいてくる」
伝統工芸を体験し、将来の目標を定める生徒も。
江戸切り子を受講する、3年の男子(17)は、
「手元に作品が残るので、うれしい。
将来は、ぜひとも工芸の道に進みたい」
伝統・文化が行く道を照らし、生徒たちは前へ進む。
◆チャレンジスクール
不登校や中退経験のある生徒を積極的に受け入れ、
社会に出る挑戦を後押しするため、東京都が設置した
3部制(定時制)の単位制高校。
幅広い科目選択が可能な総合学科で、入試に学力試験はなく、
作文や面接で合否を決める。
2000年、第1号が誕生。現在は5校ある。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100126-OYT8T00219.htm
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