(毎日 1月28日)
マウスの皮膚の細胞に、3つの遺伝子を導入し、
神経細胞を作り出すことに、米スタンフォード大の研究チームが
成功、「(人工的に)誘導された神経細胞」を意味する
「iN細胞」と名付けた。
ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のように、
どんな細胞にも変化できる「万能細胞」を使わず、
体細胞から直接、形質が全く異なる細胞を狙い通りに作成した
成果として注目。
27日付の英科学誌ネイチャー(電子版)で発表。
研究チームは、神経細胞のみが光るように遺伝子改変した
マウスの胎児の組織や新生児の尾から、
皮膚中でコラーゲンなどを作る「線維芽細胞」を採取。
神経細胞への変化に関係する19の遺伝子のうち、
3つをウイルスに乗せて導入すると、5~8日で光る細胞ができ、
神経細胞として働くことが確認。
iPS細胞を作成するには数週間かかり、
神経、筋肉、心筋などの目的の細胞に分化させる必要。
移植の際、分化しきっていない細胞が混じれば、
がん化する可能性もある。
今回の方法は、iPS細胞を使う場合に比べ、
より簡単かつ短期間でできる。
iN細胞は、それ以上変化しないため、
がん化の可能性も低いと考えられる。
チームの一員で同大再生医学研究所のリサーチアシスタント、
国分優子さんは、「将来的には、患者本人の細胞から
がん化の可能性や移植時の副作用が少ないiN細胞を
作成することで、移植治療の臨床応用の可能性を
広げることができるのでは」
◆iN細胞 安全性の検証必要
米スタンフォード大が成功した体細胞を直接、
目的の細胞に変化させる試みは、
「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれ、
iPS細胞研究と並んで世界的に研究が進みつつある。
米ハーバード大の研究チームが08年、マウスの膵臓の膵液を
作る細胞に、3つの遺伝子を組み込み、インスリンを作る
ベータ細胞を作成した例。
インスリンは、元々膵臓で産出されるのに対し、
米スタンフォード大の研究は、採取が簡単な皮膚の細胞を使い、
元の細胞とは性質も形態も全く異なる細胞を作り出した点で、
これまでにない成果。
岡野栄之・慶応大教授(再生医学)は、
「いつかは、このような研究がなされるだろうと予期していたが、
ついに出たという感がある」と評価。
体細胞に複数の遺伝子を導入して別の細胞に誘導する発想は、
もともと山中伸弥・京都大教授らがiPS細胞の作成で示し、
「今回の研究も、iPS細胞研究の延長線上にあると言える」
iN細胞は、元の細胞の形質が完全に消えているかどうかなど、
未知の点も多い。
iPS細胞と同様、再生医療での利用には、
特に安全性の詳細な検証が必要。
http://mainichi.jp/select/science/news/20100128ddm001040013000c.html
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