2010年2月3日水曜日

発達障害の子どもが増えたのは大人のせい?

(サイエンスポータル 2010年1月26日)

「京都からの提言 これからの社会のために-
子どもたちに伝えたいこと」というフォーラム。

「分数ができない大学生」(共著、1999年)で、
大学生の基礎学力低下にいち早く警鐘を鳴らした、
西村和雄・京都大学経済研究所長が中心。

西村教授が近年、大きな関心を持っているのが、
非行の低年齢化。
原因が、道徳心(モラル)の荒廃にあると考えた同教授は、
2008年、「子どものモラルに関する研究委員会」をつくり、
「子どものモラル育成を推進する4Mネットワーク」運動を始めた。

子どもたちが守るべきマナーとして掲げた4M(4つの指針)が、
「人に親切にしよう」、「うそをついてはいけない」、
「法律を守ろう」、「勉強をしよう」。

東京で開かれたフォーラムも、この指針を普及する活動の一つ。
大学教授が始めたユニークな運動にふさわしく、
フォーラムも京都大学卒新進落語家の落語あり、
運動のためにつくられた数々の歌の合唱ありと、型破り。

京都大学出身、現役の教授たちによるパネルディスカッションも、
「自主の東大に対し、自由の京大」(パネリストの1人、
鎌田浩毅・京都大学大学院人間・環境学研究科教授)。

西村教授たちが掲げる4つの指針に対し、
最初から「ご無理ごもっとも」などといった発言は、
なかなか出てこない。
教科書的でない発言も、ふんだんに飛び交う刺激的な内容。

パネルディスカッションで出た発言を一つだけ紹介。
今の子どもたちが置かれた状況の一端と、
この運動が生やさしいものではなさそう、ということだけは
伝わるかもしれない。

発言の主は、日本赤ちゃん学会理事長で
同志社大学赤ちゃん学研究センター教授の小西行郎氏。
発達障害の子どもが15%、ひどいところでは30%もいる異常さに、
まず疑問を呈し、こうしたあり得ないような数字が出てくるのも、
大人がそうしてしまっているからだと切り捨てた。

「子どもが発達障害と診断されると、先生が喜ぶ。
自分の教え方が悪いからではない、と考えてのこと。
母親までも、自分の育て方が悪いためではない、と喜ぶ」。

氏の発言を再現すると、おおよそそういうこと。
発言の真意は、「子どもが発達障害と診断されると、
ホッとする先生や母親が増えている。
自分の教え方が悪い、あるいは育て方が悪いせいではなかった、
という責任逃れの気持ち。
こういう大人たちのせいで、子どもたちもおかしくなっている」

そのように解釈したとしても、やはり不気味な指摘だ、
と感じる人は多いのではないだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/1001/1001261.html

0 件のコメント: