2009年7月22日水曜日

市民力を鍛える(4)街づくり 進んで参加

(読売 7月11日)

子どもが地域に目を向けるよう、学校が橋渡し役を務めている。

琉球大学教育学部付属中学校で、
3年生21人が、机いっぱいに広げた模造紙に向かっていた。
指導役の大学生が、「自分で調べて気づいたことを書き出してみよう」
と指示を出す。選択社会科の授業の風景。

毎年、自分たちでテーマを決め、大学生の指導を受けながら調べ、
改善策を作って市役所などに提案。

今年のテーマは、「モノレールの延伸と国道の渋滞緩和」
中学生たちは、モノレールの終着駅周辺の状況や、
沿線の国道が渋滞している様子を観察。

大学生は、同大の島袋純教授(48)のゼミ生たち。
授業を始めたのは、島袋教授がある研修会で、
「20歳になったから、いきなり判断しろと言われても、
投票なんか行けない」と言われたことがきっかけ。

社会科の教科書を調べると、政治の仕組みは分かっても、
政治的な判断力や行動力に発展する内容ではなかった。

中学生にも分かるように、「政治」を身近な「地域づくり」にとらえ直し、
授業を始めたのが2005年4月。
06年3月、授業を基に中学生の社会科の副読本を作り、
県内すべての中学校に配布。
副読本の中では、改善策を選挙の立候補者に政策提言したり、
議会に誓願や陳情を行ったりする方法を記述。

授業は、中学生が興味を持たなければ成り立たない。
昨年は、米国人と沖縄の女性との間に生まれた「アメラジアン」と
呼ばれる子どもの教育をテーマにしたが、
問題を提起するところまで議論が深まらなかった。
島袋教授は、「失敗を繰り返しながら、授業も生徒も成長していく」と前向き。

広島県竹原市の中心部。江戸時代の町並みを残す一角に、
国立広島商船高等専門学校の生徒が毎週日曜日に開く
喫茶店「Cozy Cafe」がある。

担当する岐美宗(みちよしつかさ)教授(47)が、
空き家となった民家を借りて、喫茶店を始めたのは05年5月。
授業で学んだ在庫管理など、経営を実践する場としてはもちろんだが、
地域の人が生徒を育てる環境を作ることも狙っていた。

「街づくりは人づくりである」(岐美教授)という信念。
毎年、地元の観光ガイドボランティアや街おこしの活動をしている
団体などと協力、街おこしにつながる活動をしてきた。
昨年から、地元に江戸時代から伝わる料理「魚飯」を普及させようと、
市内で魚飯を出す店を紹介するパンフレットを作った。

「最初は、地元の知らない人たちに緊張したけど、
今は親近感がわくようになった」と高専3年の柳井智里さん(17)。
周囲にすっかり溶け込んでいるようだ。

地域の人と一つの課題に挑戦することは、
市民としての意識を高めるための何よりの訓練になる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090711-OYT8T00264.htm

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