(読売 7月22日)
選挙は、大人と同じ立場で政治を考える機会を、子どもに与えてくれる。
都議選の投票日を目前に控えた7月8日、
東京・町田市の玉川学園の空き教室に、
模擬選挙の投票所が設けられた。
中央には銀色の投票箱、奥には両脇を仕切った投票記載台が置かれ、
正面には立候補者の名簿が張ってある。
9年生(中学3年生)の約150人は、入り口で投票用紙を受け取ると、
次々に都議選町田市選挙区への投票を済ませた。
本物の投票所の雰囲気を醸し出しているのは、
町田市選挙管理委員会からすべて本物を借りているから。
投票用紙は本物ではないが、ほぼ同じ書式で印刷。
準備したソ合宗隆教諭は、「生徒が大人と同じ目線に立つためには、
雰囲気作りも大切」。(ソは石へんに「夾」)
ソ合教諭は、2003年の衆院選から国政選挙や都議選のたび、
授業を利用して模擬投票を行ってきた。
今回は、「現代の社会」という授業の一環。
これまで、政府や国会の仕組みを習ってきた集大成と位置づけ。
生徒は投票の直前、20歳代の投票率が極端に低いことなどの
説明を受け、選挙公報を読んでどの候補者に投票するか議論。
「顔がソ合先生に似ている」と直感で選ぶ生徒がいたり、
「病院を充実させる人がいい」という政策重視の生徒がいたりで、
投票直前の教室は意見を交わす生徒でにぎやかだった。
模擬投票の動きを全国に広げようとしている団体がある。
そ合教諭も参加する、「模擬選挙推進ネットワーク」。
国政選挙のたび、各地の選管から本物の投票箱や選挙公報を借りたり、
各政党に依頼して、授業で使う選挙ポスターや
政権公約(マニフェスト)をもらったりしてきた。
事務局長の林大介さんは昨年10月、米大統領選に合わせて
全米の学校で行われた模擬投票を視察。
インターネット投票を含めると、約500万人が参加。
林さんの活動で最も多かったのは、07年の参院選の約8000人。
衆院選での模擬投票を準備している林さんの苦労は、
若者の政治への無関心に加え、活動への無理解。
特定の政治団体を支援する活動と誤解を受けることもあり、
代表の山崎武昭さんは、名刺に「特定の政党・宗教団体の
影響下にない『公平・中立・公正』な組織です」という断り書き。
神奈川県の県立高校のある教諭は、
「政治家を各党から呼んで生徒と議論してもらう授業をやりたいが、
県教育委員会や校長に難色を示された」と、
理解を得ることの難しさを打ち明ける。
投票が、多くの学校が夏休み中である8月30日に
行われることも頭が痛い。
選挙が終わってから模擬投票をやっても、
生徒の関心を引きつけることは難しいからだ。
夏休み期間中、渋谷など、若者が集まる繁華街で
模擬投票ができないか――林さんはそう思案している。
◆政権公約(マニフェスト)
選挙後、達成度を検証できるように政策の数値目標や実施期限、
財源などを具体的に明示した政党の公約のこと。
抽象的なスローガンや政策の羅列ではない。
公職選挙法で、政党の公認候補の選挙事務所内や演説会場内、
街頭演説の場所などに限って配ることができる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090722-OYT8T00295.htm
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