(日経 2009-07-13)
昨年11月末、自宅に家庭用燃料電池コージェネレーション
(熱電併給)システム「エネファーム」のモニター機を設置、
燃料電池実用化推進協議会(FCCJ、西室泰三会長)から
ステッカーが送付されてきた。
「No.2868」と記されている。
FCCJによると、国内で動くエネファームのうち、2868台目の装置。
No.2868が6月上旬、2度目の故障。
前回と同じ、エラーメッセージを表示して停止。
2回のエラーメッセージは、いずれも電圧が異常値であることを示し、
安全のために機器が自動的に止まった。
前回と同じく、遠隔操作で再起動をかけると解消し、再び動き始めた。
同様の事例が、他のモニター機でも発生。
対策を講じた改良版の制御プログラムを、同じ機種のすべてに
再インストールする。
電圧と電流のバランスが狂わないよう、プログラムを3回書き直した。
現在は、「バージョン3.0」の制御プログラムでモニター機は作動。
最初の連絡では、プログラムの書き換えだけだったが、
当日になって新たな作業が加わった。
システムの心臓部である発電装置の「セル」を新品に更新、
「全熱交換器」という部品を改良型と交換。半日がかり。
モニター機は、固体高分子型燃料電池(PEFC)。
取り外したセルは、メーカーで分解して内部の固体高分子や電極、
セパレーターなど、劣化が起きていないかを確認。
熱交換の性能を向上させた全熱交換器は、配管の形状も変わっていた。
取り付けやメンテナンスなどを楽にする狙いも。
作業のため、カバーを取り外し、ソフトを書き換え、
セルや全熱交換器を交換する様子を眺めていて、気が付いた。
回路基板が、何だかレトロな雰囲気をたたえている。
大きなコンデンサーや抵抗などがはんだ付けされ、昔懐かしい
ジャンパー線が基板と部品をつないでいた。
約20年前に見た、廉価版VHSビデオデッキを思い出した。
モニター機は、試作で数量が出ないため、専用ICを作れない。
その分、回路基板に手作り感が出ていた。
実際、販売する商用機は大幅な改良を施しているはず。
ポンプなどが動く時のかすかな音を軽減する緩衝材なども開発中。
PEFCモニター機の内部は、改質器の大きさが気になる。
PEFCは、発電時の作動温度が低く、扱いやすいのが売り物。
都市ガスから水素を抽出する際、高温が必要で、
温度を上げる仕組みが付属している分だけ大きくなる。
固体高分子は、COを嫌うため、除去する装置も必要。
これらマイナスを解消できるのが、固体酸化物型燃料電池(SOFC)。
発電時の作動温度が高く、この熱を使って
改質器で水素を抽出するため、機構が簡素化できる。
固体酸化物はCOも発電に使うため、除去する装置も不要。
SOFCは発電効率が45%、PEFCの33〜39%より高いのも売り物。
燃料電池は、「発電する給湯器」と呼ばれることも。
温水をつくる際に発電し、発電と給湯の合計で高いエネルギー効率を実現。
SOFCのように、発電効率が上がってくると温水を気にせず、
常時稼働の発電装置として使うケースも出てくる。
大阪ガスの担当者は、「常時稼働なら、発電効率は3ポイント上がる」
集合住宅に設置した8台の燃料電池を、相互接続し電力を融通する
「マイクログリッド」について実証試験、
「6.4ポイントの改善効果があった」と大阪ガスは明らかに。
今後、常時稼働やマイクログリッドなど、SOFCの新しい運用方法を
検討する必要があるかもしれない。
トヨタ自動車とアイシン精機は、大阪ガスが京セラと共同で進めている
SOFC開発プロジェクトに加わると発表。
トヨタの担当役員は、「SOFCは、部品点数がPEFCの半分で済む」と利点。
トヨタ式の生産技術は、燃料電池の生産コスト削減に大きく貢献すると
大阪ガスなどは期待。
FCCJのステッカー配布は、2008年度いっぱいで終わった。
最後は「No.3508」。
ステッカーには、水素を示すH2をあしらったカギ形のマークが付いている。
「水素社会実現のカギ」という期待を込めて。
09年度から、実証試験ではなく実際のビジネスが始まる。
自宅の燃料電池を生産したENEOSセルテック(群馬県大泉町)は、
7月1日に商用機を初出荷。
初年度2500台の販売を目指す。
パナソニックや東芝燃料電池システムの燃料電池も販売。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090709_2.html
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