2009年7月22日水曜日

牛乳の栄養 手軽にカルシウム補給 「毎日飲むと太る」は誤解

(2009年7月11日 毎日新聞社)

牛乳にまつわる誤解は多い。
「小魚に比べて、カルシウムの吸収が悪い」、「毎日飲むと太る」など
根拠のない話が独り歩きしている。
牛乳の栄養について改めて考えた。

日本人は、以前からカルシウムの摂取不足が指摘。
栄養学的にみて、健康維持に必要なカルシウムの摂取量は、
成長期の10代で、目安量の7-8割程度しか達成されていない
(厚生労働省公表の「日本人の食事摂取基準」05年)。

カルシウムは牛乳のほか、イワシやサクラエビ、ヒジキ、
野菜ではコマツナやモロヘイヤなどに多い。
100g当たりに含まれるカルシウム量は、
牛乳が約110mg、コマツナ約170mg、シラス干し約210mg、
干しヒジキ約1400mg。
牛乳が一番高いわけではない。

カルシウムの多い食品を食べても、
すべて体内に吸収されるわけではない。
吸収率では、牛乳が約4割と高く、小魚約3割、野菜は約2割。
食品により差がある。

◆1本で100ミリグラム摂取

牛乳1本(200ml)に、約230mgのカルシウムが含まれ、
毎日1本飲めば、100mg程度のカルシウムが摂取。
同じ程度のカルシウムを、シラス干しから取ろうとすると、
毎日、約150g食べなければならない。

阿久澤良造・日本獣医生命科学大学教授は、
「吸収の良さと、気軽に食べられる点から、
カルシウム補給には牛乳やチーズなど乳製品が手っ取り早い」
阿久澤さん自身、毎日乳製品を取っている。

◆カゼインが吸収促進

「高温で殺菌した牛乳は、カルシウムが不溶化し、吸収率が悪い」
といった、まことしやかな話も流布。
阿久澤教授は、「それは誤解」
人の腸管に入ったカルシウムは、リン酸と結合して不溶化し、
吸収されにくくなる。

牛乳の場合、たんぱく質の約8割を占めるカゼインが、
胃腸内の酵素の働きで、カゼインホスホペプチド(CPP)となり、
カルシウムとリン酸の結合を抑えて不溶化を阻止、吸収を促す。
この吸収メカニズムは、チーズやヨーグルトでも同様。

◆栄養価は変わらず

牛乳の殺菌にも、誤解がある。
市販の牛乳の大半は、120-130度の高温で2-3秒間殺菌。
63-65度や72度以上など、低・中温で殺菌された牛乳も流通。
「高温殺菌の牛乳は、栄養価が低い」、
「低温殺菌こそ本物だ」といった説もあるが、「これも誤解」

牛乳に限らず、魚でも肉でも、加熱すればたんぱく質は壊れる。
栄養価が変わるわけではない。
阿久澤教授は、「たんぱく質が壊れた方が、消化・吸収されやすい。
食べものを加熱し、加工・調理することは、
人類がずっとやってきたことで、おいしく食べる方法の一つ」

加熱の温度で、風味は変わる。
高温か低温かは好みの問題。
低温殺菌の場合、菌の死滅率が低いため、
開封後の温度管理をしっかりする必要。

◆骨粗鬆症の予防にも

「牛乳を飲むと、骨が弱くなる」というのも誤解。
上西一弘・女子栄養大学教授(栄養生理学)らは、
全国の中・高校生計2040人を4年間追跡、
牛乳の摂取と骨量の関係を調べた。

その結果、牛乳の摂取が多いほど、カルシウム摂取量や骨量も
多いことが分かった。
高校3年時の女子の体脂肪率を見たところ、
牛乳を多く取った子ほど、体脂肪率が低かった。

「成長期に骨量が少ないと、将来、骨折や骨粗鬆症になる
リスクが上がる。牛乳を飲んで太ることはない」

◆栄養素を効率的に

牛乳には、たんぱく質、脂質、ミネラル、必須アミノ酸が
バランスよく含まれ、栄養素を効率的に摂取できる。
管理栄養士の小山浩子さんは、自らの調査結果を基に、
「牛乳1本に相当する栄養価を、他の食材で調達しようとすると、
牛乳1本の価格より高くなる」
食事に、1本の牛乳を加えるだけで、食費の節約になる。

牛乳は、「完全食品」ではないし、サプリメント(栄養補助食品)の
代わりになるわけでもない。
鉄分やビタミンC、食物繊維の補給には向かない。
阿久澤教授は、「栄養バランスの優れた食品の一つとして、
牛乳や乳製品を活用して」とアドバイス。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/13/104061/

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