(日経 7月11日)
出光興産のトップが、7年ぶりに交代。
2006年、創業以来の方針を転換、株式上場を果たすなど、
経営改革を進めてきたが、石油需要の減少で先行きの厳しさも。
社長から会長に就任した天坊昭彦氏に、
これまで7年間の成果と今後の課題を聞いた。
——7年間を振り返って自己評価は?
「社長就任の2年前、株式上場の方針が決まっており、
経営改革が最大の課題。
兵庫と沖縄の製油所閉鎖などリストラを実施し、
化学分野では三井化学と包括提携。
上場後、ベトナムでの製油所建設を決めるなど、
事業面の変革はほぼ思い通りに進めてこられた」
「収益面では、未達成といわざるをえない。
原油価格高騰と景気後退、地球温暖化問題の進展など、
石油事業の厳しさは増してきた。
ピーク時、2兆5000億円に達した有利子負債は、
1兆円以下に減り、財務内容は改善したが、
まだ自己資本の積み増しは不十分」
——今後はどんな追加対策が必要か?
「社内で、高付加価値事業と呼ぶ非石油の新ビジネスを伸ばす。
薄型テレビなどに使う有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)材料や、
微生物農薬などのアグリバイオ、地熱や風力といった
新エネルギーなど、新規事業のタネをまいてきた。
まだ収益への貢献度は低いが、将来は石油精製販売、海外資源、
新規事業で、3分の1ずつ利益を稼ぐ姿が理想」
「当社の事業分野は広がってきており、
今後はすべて自前でというわけにはいかない。
事業の選択と集中を進めると同時に、
スピードとリスク分散のため、事業ごとに適切なパートナーを探す」
——新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合を決めたが、
業界再編への考え方は?
「国内の石油需要の減少は、2年ぐらいで加速。
1日あたり400万バレル程度の国内需要に対し、
製油所の能力は100万バレル近くが過剰。
5年もたてば、100万バレル分が余る可能性も。
過剰生産の解消は避けられない課題」
「過剰能力を減らすため、再編が最適な手段かは疑問。
当社が、千葉県で工場が隣接する三井化学と提携したように、
“地縁”を軸にした連携で、競争力を高める動きは進むだろうが、
会社同士の統合は難しい」
——出光興産は、歴史的に「自由奔放」、「猛烈主義」とも
言われる独特の企業文化があったが、“出光イズム”はどうなる?
「私が若いころは、社員の権限が今より大きく、
自分でやりたい仕事をやって、後から上司の承認を得ることも。
今は、『仕事をやれ』と言われるまで動かない、
待ちの姿勢が増えてきたのでは。
上場を経て社内体制は整ってきたが、社員の覇気や積極性が
失われてしまえば、企業の成長力は縮小してしまう」
「創業者の理念の1つである『大家族主義』は、
社員を甘やかすのではなく、親が子を思うような厳しさで社員を育て、
成長を促すことを意味。
不況のどん底からどうはい上がるかは、
社員と会社にとってともに大きな課題。
縮小した理念研修を再び強化し、会社の成長力につなげたい」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090710.html
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