2009年7月23日木曜日

火力発電最前線:/下 CO2削減への姿勢、問われる電力会社

(毎日 7月13日)

家庭の温室効果ガス排出量は、90年からの17年間で41%増。
電力使用が約6割を占める。

節電や省エネ家電への買い替えなど、家庭の努力が大事だが、
家庭分として算入される発電時の排出を減らす
電力会社の姿勢も問われる。

現在、火力発電の中で、世界で最も高い発電効率を誇るのが、
川崎市にある天然ガスを使う東京電力川崎火力発電所。
旧発電所の貯炭場跡に、1号系列3基(出力計150万キロワット)が完成。
環境影響評価の準備書を、同月提出した関西電力姫路第2(兵庫県)の
建て替えで効率は、1ポイント抜かれるが、
東電は「計画中の2号系列で抜き返す」と息巻く。

効率は、燃料を燃やして出る全エネルギーを100とした時、
電気として取り出せた比率で表す。
東電全火力の平均は42%、川崎火力は53%。
同社全体で1ポイント上がれば、年間180万トン、
国内排出量の0・14%のCO2削減になる。
残りのエネルギーは、蒸気の冷却排水や排気として捨てられている。
川崎火力は、燃料使用量やCO2排出量が従来の25%少ない。

石炭ガス化複合発電(IGCC)と同様、川崎火力も蒸気とガスの
2機のタービンを同時に回す「ダブル発電」方式。
石炭より簡単な仕組みで、ジェット機のエンジンに似た装置で
空気を吸入・圧縮して燃料の天然ガスと混合燃焼し、
噴流でガスタービンを回す。
同時に、高温の排気で蒸気を作る。

3基で、1時間に約190トンの液化天然ガス(LNG)と
約660万立方メートルの空気が使われる。
気温が上がると、空気の密度が下がる影響で、
夏場の発電量が1割減る。

発電所広報の三浦文雄さんは、「少しでも効率アップをと、
暑い日は空気取り入れ口に水をまいて冷やす」と
最新鋭機の意外なローテク努力を語る。

効率は、ガスタービンを高温にできるほど上がる。
約20年前の導入初期は1100度で効率43%だったが、
川崎火力は1500度。1700度の開発も進む。
材料の金属が溶けないよう、無数の小さな穴から蒸気を通して
「空気の膜」で保護したり、セラミックで覆うなど数々の工夫の結晶。
高温化は、副生物の窒素酸化物が増えるなどの限界に直面。

◇排熱利用の挑戦

タービンを回した後、まだ熱い蒸気を捨てずに生かすことで、
効率の限界を破る「電力会社初の大規模な試み」(東電)が始まった。

川崎火力の周囲約3キロの企業10社に、年間30万トンの蒸気を供給、
各社のボイラーが不要になることで、年間2・5万トンのCO2削減ができ、
発電所の効率も2ポイント上がる計算。
今年度末の開始に向け、配管の敷設が進行中。

排熱利用という点では、今年度から国の補助制度が始まった
家庭用燃料電池(エネファーム)が競合相手に。
都市ガスなどから水素を作り、酸素と化学反応させて電気を生む
超小型の化学プラントのような装置で、
同時に出る熱を給湯や暖房などに使う。

発電効率は現在33%程度だが、排熱利用を含めれば約80%に。
発電所のような大規模な配管敷設は不要だが、
1台320万~340万円とまだ高め。

国際エネルギー機関によると、世界の天然ガス需要は、
30年に06年の1・5倍に増える。
LNGの貿易量は、この10年間で2倍に増え、
日本は39%を占める最大輸入国だが、
国内の天然ガス発電所は17年度までに32基、
出力は1186万キロワット増える見込み。

CO2排出量は、新鋭機で石炭の半分、石油の3割減とされ、
生産地でガスを氷点下162度に冷やす液化や輸送にも
エネルギーを使う弱点。

イタリアで開催された主要8カ国(G8)首脳会議は、
「先進国全体で、50年までに温室効果ガス排出量を80%以上削減」
という目標。
大幅削減には、さらに飛躍的な技術開発が急がれそう。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/07/20090713ddm016040034000c.html

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