2009年7月19日日曜日

報酬上げで利用負担増も 職員待遇改善へ難問 「どうする社会保障 衆院選を前に」介護保険【3】

(2009年7月15日 共同通信社)

2000年、介護保険制度のスタートから来年で10年。
高齢化の進展で、07年度にはサービス利用者は363万人、
給付費は6兆円超。

介護業界は、重労働や低賃金による人手不足が深刻で、
職員の待遇改善を図れば、利用者の負担増につながりかねない、
という難問に直面。

政府、与党は4月の介護報酬改定で、介護事業者に支払われる
報酬の3%引き上げを実施。

民主党など野党4党が、10%引き上げを図る法案を国会に提出、
09年度補正予算で、職員1人当たり月1万5千円程度の
賃上げ相当額を、賃金増を確約する事業者に交付することを決めた。
10月から2年半の時限措置。

報酬改定の効果について、東京都社会福祉協議会が行った
アンケートでは、55・2%が「収入が増えた」と回答。
「基本給を上げた」のは37・2%など、職員の待遇改善を図った
事業者は一部にとどまった。

理由の一つは、各種サービス単価が一律に引き上げられず、
ベテラン職員が多いなど、一定の条件を満たした事業者が
料金を割り増しできる「加算」を中心としたため。

利用者にしてみれば、受けるサービスの内容は変わらないのに、
加算に伴い、自己負担分も値上げされることに。

社協のアンケートでは、「加算したくても、利用者に説明しづらい」
などの不満、「加算や交付金のような不安定な財源では、
待遇改善は困難」と指摘する声。

3月、群馬県渋川市で起きた老人施設「たまゆら」の火災では、
東京都墨田区の生活保護受給者ら10人が死亡、
都心の介護施設不足という背景も指摘。

慢性疾患の高齢者が長期入院する、介護型療養病床の
11年度末廃止を決めるなど、厚生労働省が進めてきた
社会保障費抑制策にも批判。

たまゆら問題も踏まえ、政府、与党は09年度補正予算で、
特別養護老人ホームなどの施設整備に、
3年間で約3千億円を充てることを決めた。
施設入所者が増えれば給付費が増え、いずれ保険料にはね返る。

09年度から3年間の65歳以上の保険料は、
特例交付金の創設などで全国平均で月4160円に抑えられたが、
厚労省幹部は、「3年後は5千円を超えかねない」

舛添要一厚労相は、「日本は、低負担で中福祉を実現してきたが、限界」
必要なサービスと負担のバランスをめぐる議論は、避けて通れない。

※介護保険制度

40歳以上の人が保険料を納め、65歳以上の高齢者を中心に
介護サービスを利用できる社会保険制度。
費用は、利用者が1割負担し、残りは保険料と税金で半分ずつ賄う。
事業者に支払われる介護報酬は公定価格で、
厚生労働相が3年ごとに改定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/15/104356/

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